風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

unlimited版

新しい猫背の星
 4月20日の記事「歌集2冊をダウンロード(5)」で報せた内、尼崎武・歌集「新しい猫背の星」kindle unlimited版を読み了える。
 Amazonでの諸版の発行年次、価格については先の記事で述べたので、ご参照ください。
概要
 書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズの1冊である。
 尼崎武(あまがさき・たけし)は、1979年・生まれ。枡野浩一によって短歌を知り、師事。
 第1歌集「新しい猫背の星」は、323首、光森裕樹・跋「「正直なたましい」ひとつで」、著者・あとがきを収める。
感想
 彼は、幸せを強く求めた。優れた妻を得て、子供も生まれるが、何が理由か、別れてしまう。
 正直で優しい人が幸せになるべきなのに、この世がはじき出してしまう。
 ここで社会論をぶつ積もりはないが、不条理な、歪つな世の中である。それでも生き抜かなければならない。
 いわゆるニューウェーヴの歌人が、不幸そうで、短歌の力が及ばない場合があるようで心配だ。若者に負荷を掛け過ぎる時代のせいもあるようだ。
 短歌の姿は、句跨りなどが多いが、ほぼ定型に収まっている。
引用
 以下に7首を引く。

白桃の産毛をむしる 生きてんのにさよならなんてなくないですか
一番の幸せがいい? 二番から十番ぜんぶ叶うのがいい?
かわいくてがんばり屋さんで運がいい そんな女を嫁にもらった
もう俺は今日から生まれ変わるのに昨日のことで怒られている
トイレから戻ってきたら産まれてた お父様に似てせっかちな子ですよ
笑顔でのさよならをもう恐れない 春の光に溺れていても
さよならが聞けてよかった ふらふらの足に真新しい靴を履く





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「角」第46号
 最近に入手した6冊を、簡単に紹介する。
 まず同人詩誌「角」第46号。
 2018年4月15日・刊。B5判、52ページ。詩編は1段組み、散文は2段ないし3段組み。

堀米好美 いのち
 堀米好美・歌集「いのち」。1001首の大冊。
 AmazonのKindleストアで「歌集」で検索して見つけ、kindle unlimited版をダウンロードした。
 購入した本として、今月20日の「歌集2冊をダウンロード(5)」以来である。

最初から
 宇野なずき・歌集「最初からやり直してください」。
 これもAmazonのkindle unlimited本。
 「いのち」共々、大手出版社に頼らない、自力出版・系らしく、たのもしい。

できるアナリティクス
 「はじめての最新 Google Analytics」がわからなかったので、逆引き本を買った。
 買うべきか買うべきでないか、数日迷ったあげく、Amazonに注文した。
 この「できる逆引き Googleアナリティクス」は、430ページの大冊で、高価である。
 しかし間違っていた。僕にはほとんど手の出ない本だった。

Kindleストアの歩き方
 大山賢太郎「Kindleストアの歩き方」。kindle unlimited版があったので、ダウンロードした。
 kindle本の世界も、多彩になったので。写真が、大きいものを引いて来れない。

デジタル読書の技法
 上記の本を見ていたら、この本もダウンロードしてしまった。
 kindle unlimited版でなかったけれど、いずれ読みたいと思っていて、廉価なので返品しなかった。
 上記以外にも、幾冊かのkindle本が、タブレットに収まっている。いかがわしい本ではない。機会が来れば、それらも紹介したい。



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春戦争
 先の3月28日の記事、「歌集2冊をダウンロード(4)」で報せた内、陣崎草子・歌集「春戦争」kindle unlimited版を読み了える。
 Amazonの諸版の発行時期、価格等について、そこで述べたのでご覧ください。
概要
 昨日の記事、天道なお・歌集「NR」と共に、書肆侃侃房の「新鋭短歌シリーズ」の内の1冊である。
 陣崎草子(じんさき・そうこ)は、1977年・生まれ。大学美術科・卒業後、デザイン会社等に勤めるも、23歳で独立。
 絵本絵、絵本、小説、短歌を発表している。いわゆるフリーランサーか。
 歌集の巻末に、東直子・解説「生き延びるための覚悟」、著者・あとがき「以来ずっと」を収める。
感想
 20代の末に、穂村弘の短歌に衝撃を受け作歌を始め、2008年、歌人集団「かばんの会」入会。
 やや頼りない歌、頼りない生き方である。「こんなにもだれか咬みたい衝動を」と肉食系ながら、「この道がまちがった場所につづくこと」と結婚に行き着かない恋をし、生きゆく費用を算段したりする。
 「短歌は自己救済の文学である」と言われるから、力を与えてくれるけれども、無理な使い方をすると見放されるかも知れない。
引用

 以下に7首を引く。
こんなにもだれか咬みたい衝動を抑えて紫陽花の似合うわたしだ
どうやって生きてゆこうか八月のアイスクリームの垂れざまを見る
整理して出ていく誰もいない窓 なのに見送られているふりを
すっきりとした立ち姿を見てってよこれがあなたがたの生んだものです
この道がまちがった場所につづくこと知ってるぼくらのほどよい笑い
「思索型、と、いうらしい」関節の目立つこの手と長いつきあい
忘れたいことがあふれてくる夜更け首輪のにおいを嗅いでは祈る



 
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NR
 先の3月28日の記事「歌集2冊をダウンロード(4)」で報せた内、天道なお・歌集「NR」を読み了える。
 Amazonでの諸版の発行時期、価格等については、そこで述べたので、ご覧ください。
概要
 天道なおは、1979年・生まれ、高校生時代より作歌を始め、早稲田短歌会を経て、(1時期「波濤」に在籍したようだが)、2003年より「未来短歌会 彗星集」に所属する。
 第1歌集「NR」には、250首、加藤治郎・解説「帰ることなく」、著者・あとがきを収める。
感想
 大学卒業、就職(営業職だったか)、結婚、出産を経て、退社。
 順調な生活に読めるかも知れないが、仕事は厳しく、第1子出産後も働こうとするが、止むなく退社したようだ。
 企業が、娘さんの若さと体力を搾り取って、放り出す典型である。
 現在はJCDAのキャリアカウンセラーとして、働いているようだ。
 短歌を支えに、時には武器として、これから先を歩んでほしい。
 なお解説名の「帰ることなく」は、春日井建の歌集名「行け帰ることなく」に誘発されたようだ。
引用

 以下に7首を引く。
約束をやぶってごめん惨惨とやさしい雨が降る場所にいる
懐かしいあの夕闇に立ち戻り立ち戻りして生きるのだろう
炎だつExcellグラフいくつかの受注決まりし五月、六月
ひっそりとヒトのかたちにしずもりて熟れゆく果実わが宮にあり
山間部および都市部はおよそ雨、NR(ノーリターン)とあるホワイトボード
コットンのねむりの中でおさなごがやさしく握る虹の先っぽ
新姓を貼り付けられて生き延びるこのベランダは終着点なり



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NR
 記録に拠ると今月23日に、Amazonのkindle unlimited本の歌集を2冊、ダウンロードしている。
 今月14日の記事、
「歌集2冊をダウンロード(3)」に次ぐ。
 1冊は、天道なお(てんどう・なお)、「NR」。
 紙本版、2013年8月1日・刊、1836円。
 kindle版、2015年3月30日・刊、800円。

春戦争
 もう1冊は、陣崎草子(じんさき・そうこ)、「春戦争」。
 紙本版、2013年9月30日・刊、1836円。
 kindle版、2016年5月19日・刊、800円。
 2冊とも、書肆侃侃房、新鋭短歌シリーズの歌集である。
 どうも読書が押して来ているようだ。



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同じ白さで雪は降りくる
 今月14日の記事、「歌集2冊をダウンロード(3)」で報せた内、中畑智江・歌集「同じ白さで雪は降りくる」を、タブレットで読み了える。
 諸版の発行年次、価格はそのリンクを参照ください。
 今月21日の記事、
田丸まひる「硝子のボレット」に次ぐ。
概要
 歌集は、344首、大塚寅彦・解説「旅のはじまり」、著者・あとがきを収める。
 中畑智江(なかはた・ともえ)は、1971年・生まれ。
 2008年、「中部短歌会」入会。2012年、中城ふみ子賞・受賞。
感想
 解説で述べられているが、短歌の比喩がとても上手である。比喩に賭けているような所がある。それに拘りすぎると、「歌なんてどうでもよくなる時があり」という心境になる。
 様々なレトリックを凝らした短歌を読んでくると、それらでは感動しにくい自分がいる。
 むしろ子育て、夫との齟齬、などの主題が気になって来て、現代的である。
引用

 以下に7首を引く。
レタスからレタス生まれているような心地で剥がす朝のレタスを
アメリカンチェリーの果汁しみるごと美(は)しき依存をしてみたき夏
限りなきひかり寄り添うボトルには水の期限が記されており
学校に行けなくなった子の昼にあかるき秋がすみわたりおり
握力の失せて展きしままにある右手の平はしずかな荒野
離してはいけないはずの手を君は傘の柄くらいに思っていたか
簡単にあきらめるという才能を持つ子が公孫樹の緑陰に入る




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我孫子十字 童子の像
 記事にはしなかったが、(記録に拠ると)今月2日に我孫子十字・歌集「童子の像」kindle unlimited版をAmazonよりダウンロードし、先日にタブレットで読み了えた。
概要
 2012年に「紅書房」より刊行された歌集を基に、2017年11月15日、(株)22世紀アートを通して、電子書籍化された。
 作者は既に、歌集「大寺の裏」、句集「木の葉雨」を刊行している。
 電子版「童子の像」は、横長1ページに9首(9行)を収め、字は大き目で、読みやすい。
 ハイライト機能があるので、気に入る歌にはハイライトし、メモと共に残した。
 書肆侃侃房以外でも、歌集の電子出版は、業者を通してでも、始まっている。
引用と感想
十月の暦をめくり残りたる月日を思ひ来し方を思ふ
 十月は、暑い夏と寒い冬の間で、人生の感慨の湧く時季であろうか。
始まりは闇市といふ駅裏の市場近々毀たるるといふ
 戦後の名残りの終わりが、市街の建物にも及んでいる。
曾遊の箱根の山を偲びつつ二日三日は駅伝を追ふ
 過去と現在が、感覚では繋がっている。
傾ける塀の隙よりカーテンを引きて静まる廃屋の見ゆ
 少子化と都市集中により、過疎地でなくとも、廃屋は増えるだろう。

絶句してひた目守るのみ次々とテレビに映る大津波の様
 東日本大震災を、書き残す事は大事である。
大逆の罪に問はれて刑死せる幸徳秋水羊羹と化す
 時代は移り、土産品となったのだろう。
不知火の海を隔てて天草をあなたに見つつ出湯に寛ぐ
 老いの安穏のひと時だろう。
 総じて、古い酒を新しい革袋に入れた感は残るが、自費の電子歌集出版の先駆けとして、勇猛である。



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