角川書店「生方たつゑ全歌集」(1987年・再版)より、第4歌集「浅紅」を読みおえる。
 第3歌集
「春盡きず」は、今月8日の記事にアップした。
 原著は、1950年、女人短歌会・刊。
 「女人短歌会」は、1949年、女歌の発展を期して、北見志保子、五島美代子、生方たつゑ、長沢美津らが流派を越えて発足させ、1997年、当初の使命を果たしたとしてみずから解散した。(三省堂「現代短歌大事典」2004年・刊に拠る)。
 「浅紅」は、師・松村英一の命名で、「春盡きず」に先行して刊行された。
 1947年~1950年春までの作品を集める。
 「巻末に」では、第2芸術論等の衝撃が示唆されており、この歌集にはこれまでほとんど無かった字余り・字足らずの歌が少し散らばり、また生の希求が詠まれている。
 以下に7首を引く。


梅干の小さき種を歯に噛みてこのたのしみをほしいままにす
やはらかに草が光れりまがなしき白き卵子と鳥の巣とあり
青苔にさすうつくしき光あり心しひたげ生きゆく日にも
おのづから破綻もとめてゆくごとく行ひし日も悔ゆることなし
骨肉がものにけはしくあらがへり生活(くらし)まづしきゆゑにもあらず(姑逝く)
ものうくて物言はぬ夜も胸に挑むものもつ夜も月は明るし
流人(るにん)らが住みつきたりし島かげも月没りたれば波にねむらむ
白鳥5
「Pixabay」より、白鳥の1枚。