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 砂子屋書房・現代短歌文庫127「続 森岡貞香歌集」(3歌集全編+歌論・エッセイ)より、3番めの歌集「敷妙」を読みおえる。
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歌集「夏至」は、今月18日の記事にアップした。
 原著は、2001年、短歌研究社・刊。
 この「敷妙」は、年次的に「夏至」に次ぐ第8番の歌集であり、また森岡貞香(1916年~2009年)の生前最後の歌集である。没後、3歌集「九夜八日(ここのよやうか)」、「少時(しばらく)」、「帯紅(くれなゐ帯びたり)」が、いずれも砂子屋書房より出版された。(Wikipediaに拠る)。
 「敷妙」には、破格というより乱調の歌も少し交え(例えば「死ぬるにも何なさむにもなすことのなきと言ひさしてねむりし」では、下の句(77)の切りようもわからない)、逝いた母(同居していた)を詠うなど、優れた作品を多く収めた。
 この文庫には後、13編の歌論・エッセイを残すのみである。
 以下に7首を引く。


土曜日は何曜日とてわが母の海馬の不調の半日あまり
この春も明日にか過ぎむほら貝を吹くやうにして烏のきこゆ
知らぬとて母の待ちし日 みまかるは生(いのち)の中の一度(ひとたび)なるに
雨つぶをうけたるやうにさみしさが服に著きてをりbrush(ブラシ)をくだされ
校庭に入り来てあそぶ男童を見れば父親は木下に立てり
椅子の足の影の頑丈にあるが見え死にたる者に別れがたしも
敗けいくさに見しありさまはわが生にしるされしまま生も悲しも
 (題名と引用の1部に、正字を新字に替えた所があります)。