河出書房新社「ドストエーフスキイ全集」第1巻(1958年・2刷)より、3作目の長編小説「ネートチカ・ネズヴァーノヴァ」(米川正夫・訳)を読み了える。5月26日の記事「分身」に次ぐ。
 3部に分かれると見られ、第1部は幼い娘・ネートチカの語りで、母(苦労の果てに亡くなる)と継父(自負を持つヴァイオリニストながら、自堕落の果てに亡くなる)との貧しい生活を描く。
 第2部では、みなし児となったネートチカが、公爵に救われ、公爵令嬢カーチャと幼い恋をする。
 第3部では、公爵の家族がペテルブルグからモスクワへ発ち、ネートチカは公爵夫人の長女、アレクサンドラ・ミハイロヴナとその夫の許に引き取られる。数年後、その夫の腹黒さを発いて、家を出る予感の中で、この小説は未完のまま終わる。
 1849年、ペトラシェフスキー事件によって逮捕され、銃殺直前に特赦、4年の流刑・5年の兵役のあと、ドストエフスキー(1821年~1881年)の関心が戻らなかったためである。
 なおドストエフスキーは、6歳頃に母を亡くし、18歳頃に父を亡くしている。
 この小説は、単行本、文庫本で刊行されていず、全集でしか読めないだろう。
 登場人物は、ネートチカを含め、激情型が多い。僕の生活が1時、波乱気味だったので、温和な生活を望み、共感はあまりない。
 しかし、みなし児が貴族に救われるストーリーのように、ドストエフスキーは文学による救いを信じ続けたようだ。
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写真ACより、「お花屋さん」のイラスト1枚。