
7月10日の記事で到着を報せた、生方たつゑ・歌集「ひとりの手紙」を読み了える。
角川書店「生方たつゑ全歌集」以来、初めて読む歌集である。
1982年、新星書房・刊。1ページ2首組み、185ページ。
彼女の夫は亡くなり、娘とは離反的で、カスガイとなる婿は癌で逝いている。
雪国で、一人暮しを続けた。「ことなりし世界と思ふこともさびし書庫に並べしわが著書の類」と詠んで、過去の実績に否定的になる事は、落魄の思いだろうか。
「あとがき」に「過労のための長い入院生活から放たれた机辺は雑然としていて、この中に加えるべき作品の整理も不可能のまま、手離すことにした。」とあり、彼女をサポートする人がいなかったようだ。
以下に7首を引く。
ひとすぢに生きゆくこともかなしきにひとすぢに死を遂げしをとめら(疼きの島—沖縄—)
丘くれば喪章のごとき黒き蝶貪婪にしてまつはるまひる(同上)
雪の日の孤独をむしろ運命となしつつ恋ふる父ははのこと
躓きやすくなりし雪上をあゆみきていちにんの死は刃よりも痛し(別れ—松村英一先生—)
密度なきくらしなれども手紙など綴ればいづる君の幻覚
をりをりに大てまりの白き花むらがしあはせ揺するやうに傾く
ひとりゐて物言ふこともなくすぎし日と思ひつつともし火ともす


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