福井県俳句作家協会・事務局より送って頂いた、「年刊句集 福井県 第56集」より、2回目の紹介をする。
同・(1)は、今月8日の記事にアップした。
概要
今回は、31ページ~51ページの21ページ、42名の420句を読んだ。
会員順の「福井地区(福井市・吉田郡)」の初めである。ほぼ俳句会毎の順に並んでいる。
感想
長い歴史と、広い範囲で吟じられる俳句で、独創性を出すのは、並み大抵のことではないと感じる。
中には初心らしい拙さに、危ぶみもするが、結晶度の高い作品を、待つ思いである。
引用
H・純子さんの「初景色」10句より。
初護摩や先づ野球部の名を奉ず
H・信子さんの「大地のうてな」10句より。
切り株は大地のうてな小鳥来る
N・昌子さんの「初恋」10句より。
水音も風音もあり冬耕す
写真ACより、「お花屋さん」のイラスト1枚。
2018年04月
「梅崎春生全集」第3巻より(1)

沖積舎「梅崎春生全集」第3巻(1984年・刊)より、初めの紹介をする。
第2巻の了いの記事は、今年2月14日にアップした。
今回に僕が読んだのは、「輪唱」(「いなびかり」、「猫の話」、「午砲」の3作品より成る)、「赤帯の話」、「黒い花」の3編である。
「輪唱」
「いなびかり」は、仏師だけれどもモク拾いをしている「おじいさん」、それを巻いて売っている「おばあさん」の話である。おばあさんが稀に鯨肉を買って来ると、野良猫に半分食われてしまい、火吹き竹で横面を殴りつける。
「猫の話」では、若者の部屋に居着いた猫が、「いなびかり」の話で殴られてふらふらと自動車に轢かれ、その姿が消えるまでを、若者は窓より眺めている。
「午砲」は、午砲を打つのが仕事の「叔父さん」と「少年」の物語である。前作の「若者」の少年時代の話らしい。
3作とも、戦後の貧しい、生への執着が露わな作品である。
「赤帯の話」
シベリア抑留中の「私」たちが、「赤帯」と呼ばれる人情味ある監督に接する話である。人間関係、食事などに、もっと苛酷であったように読んでいるが、そのような事態があったかも知れない。
「黒い花」
未決囚(女性)より裁判長への上申書の形を採っている。継母との確執、敗戦、ダンスホールへ通うようになり、不良たちと混じるようになり、殺人を犯してしまう経緯を、縷々と述べている。
犯罪者の生い立ちとして、形式化があるようだけれど、戦後すぐの犯罪者として、ありえた話だろう。


「ヴィヴァルディ作品集」より(12)最終回
BRILLIANT CLASSICS版の廉価版「ヴィヴァルディ作品集」(全66CD)の最終回、66枚目のCD、「ソプラノとアルトのためのカンタータ Ⅱ」を聴き了える。写真は、紙ジャケットの表である。
先の11回目の紹介は、先の3月12日の記事にアップした。
ヴィヴァルディ(1678年~1741年)は、イタリア、バロック期の作曲家である。没後、忘れられたが、19世紀末にバッハが再評価されると共に、彼の作品も復興した。
CD66は、RV666「憧れの瞳よ」、RV671「懐かしい森、友なる牧場」など、全6曲、総58分余を収める。ソプラノとアルトの、美しい歌声だった。
現在では、オペラ、歌曲より、協奏曲が高く評価されるようだ。
彼は多産な作曲家で、RV番号は819番まである。
これで「ヴィヴァルディ作品集」を1通り聴き了えたが、重ねて聴くかどうかはわからない。
文挾夫佐恵・句集「黄瀬」を読む
角川書店「増補 現代俳句大系」第13巻(1980年・刊)より、8番目の句集、文挾夫佐恵「黄瀬」を読み了える。
先の3月23日の記事、磯貝碧蹄館・句集「握手」に次ぐ。
概要
原著は、1966年、「秋」発行所・刊。
石原八束「序にかへて」、524句、著者・あとがきを収める。
文挾夫佐恵(ふばさみ・ふさえ、1914年~2014年)は、1934年「愛吟」入会、1944年「雲母」入会。1961年、石原八束「秋」創刊に参加、1998年に同誌・主宰。
感想
1934年~1965年の作品を、17章に分けて載せる。幾つかの旅行吟連作があるが、僕は好ましく思わなかった。
生活の句の外に、生まれたばかりの子を置いての夫の出征・被災・帰還などの戦災と、母の死、かりそめの想いなどの句が残る。
繊細なレトリックはあるが、見得は切っていないので、嫌味はない。
引用
以下に戦後の句より、5句を引く。
帰還兵なり雪嶺の下に逢ふ(1945年)
風邪の子に読むざら紙の童話一つ
海棠の花のおもさの闇となる
悴みて針見失ふ夜の畳
嵯峨菊の穂先に縋りつく暮光
写真ACより、「おもてなし」のイラスト1枚。
同人詩誌「果実」78号を読む

昨日の記事「届いた3冊」で報せた内、初めの同人詩誌「果実」78号を読み了える。
2018年4月、果実の会・刊。同・77号は、昨年11月4日の記事にアップした。
B5判、1段組み(散文は2段組み)。B5判で1段組みは、珍しく豪華で、僕の属する「青魚」がB5判2段組み、他にA5判の同人詩誌も多い。
7名21編の詩、2名2編の随筆を収めて、活動旺盛である。
O・雅彦さんの「たそがれのうた」は、1行の字数を8字に決め、行末を揃えた5連である。
故・詩人の広部英一さんが晩年、行末を揃えた(1連の行数、連の数も揃えたけれども)詩を書いており、その影響だろうか。広部さん以前にその手法を採った詩を、僕は知らない。広部さん、O・雅彦さん、W・本爾さんは、母恋で繋がっているのだろうか。
N・昌弘さんの3編の内、「叫び」では、末連で「思い通りにいかないことこそ楽しむ/お前たちにはわからないだろうと/AIに叫んでやるのだ」と、AI時代に対抗しようとしている。
F・則行さんの「六月」に真情が籠もっている。
T・篤朗さんの5編の内、「川岸にて」の冒頭で、「いってしまうのかい/私は震える声で つぶやく/ふるさとの川にたたずむ私の耳に/川の音と混じりあって/さようなら さようなら/聞こえてくる」と謳って、変わってゆく人心、去ってゆく時代を歎くようだ。
1部、「空虚としてのレトリック」と呼びたい詩があって、自身の戒めにもなる。


届いた3冊(3)

最近に手許に届いた3冊を紹介する。
入手した本として、3月30日の記事で報せた「届いた4冊」に次ぐ。
まず同人詩誌「果実」78号。
2018年4月・刊。B5判、43ページ。県内の教員・教員経験者を主な同人とする。
新加入のO・雅彦さんは教員でなく、都内在住だが、縁あって「果実」同人となった。

ジョン・ニコルズ・著、村上春樹・訳の小説「卵を産めない郭公」。
新潮文庫、2017年5月1日・刊。
楽天ポイントの残り676ポイントと、47円で購入。
初め帯文を、「20年前の頃に出会って」と誤解していて、「20歳の頃に出会って…」だった。正確に読んでいたら、買わなかったかも知れない。

川上未映子の村上春樹へのロング・インタビュー「みみずくは黄昏に飛びたつ」。
2017年4月25日、新潮社・刊。345ページ。
メルカリの800ポイントで購入。
最近、あまりお金を払って本を買っていない。


「年刊句集 福井県 第56集」(1)

先の3月30日の記事、「届いた4冊」で報せた内、了いに紹介した「平成29年版 年刊句集 福井県 第56集」を読み始める。
「同・第55集」の了いの紹介は、昨年6月9日の記事にアップした。
概要
2018年3月、福井県俳句作家協会・刊。2段組み、281ページ。
1名1段10句を載せる。
感想
先ず役員の句から始まるので、顧問~幹事の36名360句、名誉会員・参与の18名180句を読み了える。
完成された立派な句があって、見事だと思うけれども、如何なものかとも思う。
句歴が長く活躍する俳人だから、それも理だけれども、いつまでも発展途上であってほしい。
引用
F・フジ子さんの「仏舞」10句より。
木洩れ日に金の面映え仏舞
T・まゆみさんの「結び目」10句より。
後悔のかたまり崩すかき氷
T・芳江さんの「鳥帰る」10句より。
俎板の乾く間もなし三ケ日

