川上未映子の長編小説「すべて真夜中の恋人たち」を読み了える。
先の9月22日の記事「届いた1個と1冊」で、メルカリよりの到着を報せた。
概要
初出:「群像」2011年9月号。
単行本:2011年10月、講談社・刊。
講談社文庫:2016年8月、18刷。
感想
読み了えて、正直、失望した。長い助走を経て、クライマックスが、主人公・入江冬子が恋人・三束さんの手をとって、愛を告白する所だった。約束した入江の誕生日に、三束は現われず、連絡が取れなくなる。三束よりの手紙で、彼が失職した者で、教師と経歴詐称していた事を詫びられる。
男性、読者に媚びていない。そうして書くと、このような小説になるのか。読後、昔に読んだ堀辰雄「風立ちぬ」を思い出した。結核病棟に娘さんを見舞うだけの恋だったと記憶する。事実に近い部分もあったようだ。
周囲の女性友人の、様々な生活も見聞として語られるが、ピント外れのようだ。夫婦とは、愛憎のドロドロから澄んでゆくものではないだろうか。個の本性には、エゴも思い遣りもある。
2018年10月
現代短歌文庫「続 藤原龍一郎歌集」より「19☓☓」を読む
砂子屋書房・現代短歌文庫(104)「続 藤原龍一郎歌集」より「19☓☓」を読み了える。
今月26日の記事、同「嘆きの花園」を読む、に次ぐ。
概要
原著は、1997年、ながらみ書房・刊。
1970年代以降を輪切りにするような標題の、6つのテーマ詠に、間奏曲を挟んで構成している。
感想
大きなテーマ詠は、ある転回点(転向と呼んでも良いかも知れない)を示す場合が殆んどだ。宮柊二も、高野公彦もそうだった。しかし藤原龍一郎は、6つのテーマ詠を成し(それだけ内のエネルギーが大きかったのだろう)、その後、保守にも生活にも走っていないようで、偉容である。
福島泰樹の「短歌絶叫コンサート」を1度聴いたことがあるが、あの叫びにも似るようだ。
知らない固有名詞が多く、検索すればわかるのだろうが、いまはその意義は小さいと思う。
人の繋がりが基で生まれた連作である。あとがきで彼は、「速度の充実も虚無も、たぶん、ここにある。」と自負している。
引用
以下に7首を引く。
内乱の予兆ごとく雪やみて後の沈黙、さらば同志よ
村上団地寒夜せつなく咲き残るどうしようもなき山茶花の白
われは見たり!才気あふれる誰かれのみずから挫折してゆくさまを
否応なく永き昭和を生かされて麻痺するごとき月光の首都
東京の倦怠を胃の底までとマック・シェイクを吸い吸い吸いて
東京に雨ふる午後を朽ちてゆくココロザシある冥きヨロコビ
同時代的俗論と俗塵に知を身をさらし 御免蒙ル
写真ACより、「乗り物イラスト」1枚。
Wi‐Fi化とランキング・ポイント
10月21日に記事「家うちのWi‐Fi化・完成」をお報せしましたが、Wi‐Fi化の重要なデメリットがあります。
それ以来、ランキン・グサイト「ブログ村」のイン・ポイントが異様に少ないのです。自己投票が、旧・タブレットも生き返り、40ポイントあるかと思ったのですが、10ポイントしかありません。
どうやら1ルーターからの投票は、1件のみと数えるようです。
それで真夜中0時過ぎに記事更新し、各端末1つずつ投票して、すぐ結果の出るブログ村でポイントを確認しました。
Wi‐Fiをオフにしたスマホと、Wi‐Fiのタブレット1つから投票すると、20ポイントと出ます。
そのあと、もう1つのタブレットと、パソコンより投票しても、ポイントは増えません。
パソコンはモデムに直接、有線で接続しています。
つまり1モデム(ONU)を通した投票は、すべてが1投票と見做されるのです。
ポイントの多いランクならさほどでないでしょうが、僕のようにポイントがそれほど多くない場合、自己投票が減ってしまうのはダメージです。今はスマホを投票の時だけ、Wi‐Fiを外して、これまでより1日10ポイントマイナスに抑えています。
けちくさい話かも知れませんが、Wi‐Fi化のデメリットです。ご用心ください。
写真ACより、「フード&ドリンク」のイラスト1枚。
川崎展宏・句集「葛の葉」を読む
角川書店「増補 現代俳句大系」第14巻(1981年・刊)より、7番目の句集、川崎展宏「葛の葉」を読み了える。
今月25日の記事、広瀬直人・句集「帰路」に次ぐ。
概要
原著は、1973年、杉発行所・刊。自序句1句、301句(1955年~1972年)、自跋、あとがきを収める。
川崎展宏(かわさき・てんこう、1927年~2009年)は、加藤楸邨「寒雷」に参加。1970年、森澄雄「杉」創刊に参加。1980年、同人誌「貂」創刊、代表となる。
感想
自跋で「俳句は遊びだと思っている」と述べて、人間探求派の「寒雷」と決別した。
高浜虚子の花鳥諷詠を再評価し、拠り所とする。
戦前育ちながら、嫌味がない。デリカシーに満ちていると評された。
戦後昭和の生活を、微細に捉えている。
引用
以下に5句を引く。
暑し暑し昼餉の瓜と醤油差し
松の花瀬戸物市を開かんと
西瓜食うて声変りをり中学生
海鼠食ひし男まぎれぬ街の燈に
ゴルファーらヘアピンのごと枯芝に
写真ACより、「フード&ドリンク」のイラスト1枚。
PV数の誤表示
14時32分現在、このブログの今日のPV数が、437PVになっていますが、ライブドア側のミスの誤表示です。
真実を知らなければ、わあ、今日のPV数が多い、と喜んでいられます。
しかし過去にも経験のある僕は、管理画面(マイページ)のトップからでも、真実を知ります。
現在は90PVです。
今年8月27日の記事「バズではありません」では、4万余のPV数を誤表示しました。
ライブドア・ブログの僕のブログでは、稀まれにあるようです。
真実を伝えないのは、困るというより、1種の悪だと思います。
ライブドアには、このような事がないよう、お願いしたいものです。
写真ACより、「乗り物」のイラスト1枚。
覇王樹社より2冊が届く
最近に短歌結社・覇王樹社より届いた2冊を紹介する。
結社歌誌「覇王樹」2018年11月号(初めの写真)が、10月26日(金曜日)午後に届いた。
「同・10月号」の感想は、今月2日にアップした。そのリンクより、10月号の到着、過去号の感想へと、遡ってゆける。
11月号は、11月1日付け・刊。36ページ。10首詠4名、15首詠2名も揃って、勢いがある。
編集後記に「覇王樹のホームページから入会して定着してくれる方が多い…」とあり、運営の新しさがある。
なお僕の歌6首(8首出詠より選)他は、もう1つのブログ「新サスケと短歌と詩」の、10月27日以降の記事より少しずつ順次掲載するので、横書きながらご覧ください。
あとの写真は先日に届いた、「覇王樹」前身の「珊瑚礁」総目次である。1917年~1919年にかけて、通巻26号が、橋田東聲達によって発行された。貴重な資料である。
「覇王樹」は、2010年の「90周年特大号(抜き刷りあり)」で、1919年の創刊号~1954年までの、総目次(通巻353号)を載せた。抜き刷りを僕も有している。
2020年の100周年には、それ以後を集めた総目次が刊行される予定である。
浅羽佐和子・歌集「いつも空をみて」kindle unlimited版を読む
浅羽佐和子・歌集「いつも空をみて」kindle unlimited版を、タブレットで読み了える。
ダウンロードは今月16日の記事、「入手した3冊(3)」にアップした。
概要
シリーズ名、各版の出版時期、価格は、上記のリンクに書いたので、ご参照ください。
浅羽佐和子(あさば・さわこ)は、1972年・生。2001年・未来短歌会入会。2009年・未来年間賞受賞。
「いつも空をみて」には歌集編に、加藤治郎・解説「空を見上げる」、後記「短歌とわたし」を収める。
感想
Ⅲ章に別れ、第Ⅰ章ではありがちな、危うげな恋が描かれる。若い女性の短歌は、悲恋ものが多い、と思ってしまう。
第Ⅱ章では、いきなり長女出産後の子育てが描かれる。優しい母親だけでは、いられないようだ。
仕事はSEのそれもマネジメント役として、キャリアを積んでいる。
生活の違和感を、字余りの多い歌で訴えている。
「男は気づかない振りをしている」か「ほんとうに気づかない」と断罪される。気づいて子育てに参加しても、男は仕事が100%うまく行かなかったり、昇進に響いては、1家で困ると思うのだろうか。
第Ⅲ章では、次女誕生の出産場面から、2人の子育てとなる。女性に不利な社会の仕組みだと思うけれども、僕には提言の言葉がない。
彼女が短歌を続けて、良い家族関係となり、仕事で奮励する、日が来る事を願うのみである。
引用
以下に7首を引く。
返事せぬままのメールがそれぞれの表情をして私を見てる
恋人が雨の匂いを消してゆく 花の図鑑はもう開かない
眠いのに眠れない子にいなりずしみたいな足でほっぺを蹴られ
暗闇の全件削除した指に煙のようなにおいが残る
予定日がこわい、私の愛情がなにものかにまた試されるようで
真夜中に何度も私の手をさがす見つけてなでてそしてまた寝る
この鍵をグルッとまわして母親に戻らなきゃいけないんだ、さあ