今月22日の記事で到着を報せた本、米川千嘉子・歌集「吹雪の水族館」を読み了える。
現代短歌文庫の「続 米川千嘉子歌集」の第4歌集・「一葉の井戸」(2001年・刊)より、第8歌集まで、14年を一足飛びに越えての読書である。第7歌集「あやはべる」も買ってあるので、逆年順に彼女の歌集を読むことになるかも知れない。
概要
2015年11月1日、角川文化振興財団・発行、KADOKAWA・発売。
第8回・小野市詩歌文学賞を受賞した。
題名は2012年、馬場あき子らと共に、黒川能を鑑賞した際、鶴岡市立加茂水族館を訪れて、有名なたくさんの水母を観た経験の1連から採られた。
感想
前歌集「あやはべる」で迢空賞を受賞して、肩の力が抜けたかの感がある。
一人息子は、家を出て学び、厳しい就活を経て就職した。夫は壮年で、仕事・短歌に重い役割を果たしている。
被災した、東北沖大地震の事も、原発災害を含め、繰り返し詠まれている。
「ゆるキャラ」を土地の神とも、ただの着ぐるみとも、詠んでいる。
引用
以下に7首を引く。
撫子のひびき更新さるる夏うるはしと言へなでしこジャパン
面接は六次面接まであると聞くとき出づるマトリョーシカは
熱のある人間ほどの気温にてへんな暑さをふらふら帰る
つくづくと衰ふる土地の神にして紅葉の渓に踊るゆるキャラ
疲れふかきゆゑに眠れずやうやくに眠りし夫の奥の海光
滅びそめし国の小旗を頬に描(か)く若者はもう滅べと言はず
父・夫(おつと)・息子それぞれ理由(わけ)ありてところ天食むわが辺にをらず