風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

2020年08月

 総合歌誌「短歌往来」2020年9月号、Kindle Unlimited版を、ほぼ読み了える。
 入手は、今月28日の記事にアップした。



短歌往来9月号
 2020年8月15日、ながらみ書房・刊。
 入手紹介で、捨て身のKindle Unlimited化と書いたのは、紙本の定価が850円なのに対し、Kindle Unlimited本は1ページ0・5円くらいで、全部読んでも1冊100円か200円にしかならないからだ。若い編集人・佐佐木頼綱の決断だろうか。

 特集は「子育て&子供のうた」。「子育て」と「子供」を並立させる志向に異論もあった。
 短歌5首と短文だが、俵万智の「餃子の時間」では、一人息子が高校生になっていて楽しい。子がトラブルを抱えている場合も多いようだ。

 連作、知らない歌人の歌、楽しく読んだ。
 手軽に新しい短歌に接することを望んでいるので、Kindle Unlimitedで短歌を読めるのは嬉しい。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加

 岩波文庫の一茶「七番日記」(上)より、2回めの紹介をする。
 同(1)は、今月23日の記事にアップした。



 今回は文化7年7月~12月、89ページ~133ページの、45ページ分である。
 文化10年、継母・継弟との和解が成立して、田畑からの収入を得るようになるまで、文筆一本の生活であり、実際上、豪商・寺の住職を頼り、門人等に頼って生活していた。パトロンと門下が頼りだったのである。
 文化7年は、江戸流寓時代と言われる中の1年である。
 夏の涼み、冬の暖房の心配、等が吟じられている。

 以下に5句を引く。
咲たての朝皃
(あさがほ)(値)ぎり給ふ哉
痩蛙まけるな一茶是に有
はつ時雨俳諧流布の世也けり
雪ちるや七十皃の夜そば売
とし暮て薪一把も栄耀
(ええう)

朝顔
写真ACより、「朝顔」のイラスト1枚。


このエントリーをはてなブックマークに追加

 砂子屋書房「葛原妙子全歌集」(2002年・刊)より、歌集「鷹の井戸」を読み了える。
 先行する歌集「朱霊」は、6月25日の記事にアップした。



 歌集「鷹の井戸」は、1977年、白玉書房・刊。
 721首、著者・覚えがきを収める。
 戦争未亡人の森岡貞香、独身を通した元・貴族の富小路禎子と違って、彼女は夫が有能な外科医であっただけである。女権拡張の波の中、歌作りに熱中して、家事はあまりせず家族を困らせたという。
 彼女の浸った豊かさも、現代の僕たちが、ほぼ手に入れたものである。全歌集の口絵写真を見て思うのだが、彼女はただのおばさんだったのではないか。

 以下に7首を引く。正漢字を新漢字に直した所がある。
濃赤に花咲く日ありかのつばき崑崙黒といへるひともと
雪降ると告げたるわれに夫の目の青く光りて応えなかりし
かの廃墟の列柱をみよ人生きて地上にあまたの空間を作りき
おもほえば暗き虚空に人間・花束などの飛ぶ絵を好まず
蔓伸びる斑入りのかづら人々の足もとにくるさまのおもむろ
白夏至の家といふべくひそみゐる猫のゆきかひ人のゆきかひ
差し入れし水中の指仄白しわたくしの手に魚あつまらず
タカ
写真ACより、「タカ」のイラスト1枚。



このエントリーをはてなブックマークに追加

 最近に入手した2冊を紹介する。
 まず所属する結社の歌誌、「覇王樹」2020年9月号が届いた。


覇王樹・9月号
 2020年9月1日付け・刊。36ページ。
 同・8月号(100周年記念特大号)は、先の7月25日の記事、届いた2冊を紹介する(15)にアップした。


 僕の6首・他は、もう1つのブログ「新サスケと短歌と詩」の、8月27日・以降の記事に順次アップするので、横書きながらご覧ください。


 その他にKindle Unlimited版で、総合歌誌「短歌往来」2020年9月号が出ている事を知り、タブレットにダウンロードした。
短歌往来9月号
 歌誌代が950円だから、捨て身の電子化と言えるだろう。
 特集は「子育て&子供のうた」。僕は同誌を読むのは、初めてである。Kindle Unlimited版化の効果だろう。

 両誌とも、読み了えたなら、ここで紹介したい。



このエントリーをはてなブックマークに追加

 KIndle版「室生犀星作品集」より、「みずうみ」を読み了える。
 先の同・童話とエッセイを読む、は6月9日の記事にアップした。



室生犀星作品集
 作品集の表紙を再掲する。

 「みずうみ」は、初めに「童話でも小説でも散文でもない」と断っている。
 写生ではない俳文という所だろうか。
 4章と分量は意外と多かった。
 湖辺の一軒家に住む眠元朗とその妻、娘と、3人が登場人物である。眠元朗とその妻は生活に飽き、険しい目を交したりする。
 結末で父親は、乙女さびた娘を、対岸の桃花村へ小舟で送り出してしまう。
 家族の由来も、生業も、心象小説のような1編では、どうでも良いのである。
 底本の親本は、「室生犀星未刊行作品集 第Ⅰ巻 大正」三弥井書店、1986年・刊。初出は「詩と音楽」1923年5月号。旧かなを新かなに直してあるだろう。


このエントリーをはてなブックマークに追加

 穂村弘の新歌集「水中翼船炎上中」を読み了える。
 購入は、今月18日の記事、3冊を買うにアップした。



IMG_20200817_0002
 2018年5月21日、講談社・刊。328首、著者・あとがき、別刷・メモを収める。箱入り。
 第4歌集だが、僕はこれまで読んだことがなく、歌誌の掲載作や引用で読んで来たのみである。

 子供時代、思春期に固執して、回想の歌を多く創っている。僕は農家の次男だったので、それらへの執着はない。幾つかの懐かしい思い出はあるけれども。
 母の挽歌や現在の歌では、リアリティのある作品がある。真実味のある作品に惹かれる。
 ニューウェーブの歌は、戦後の前衛短歌の、俵万智・以降版と呼ぶべく、軟弱に見えるけれども、彼らへの時代的要請もあったのだろう。


 以下に7首を引く。
窓ひとつ食べて寝息をたてているグレーテルは母の家を忘れて
助けてと星に囁く最悪のトイレットペーパーと出会った夜に
ナタデココ対タピオカの戦いを止めようとして死んだ蒟蒻
アルコール、カロリー、糖質無しというビールの幽霊飲んでしまった
母のいない桜の季節父のために買う簡単な携帯電話
わはははと手を打ち終えた瞬間にぶごといびきをかいている父
ハミングって何と尋ねてハミングをしてくれたのに気づかなかった


このエントリーをはてなブックマークに追加

 佐佐木定綱の第1歌集「月を食う」を読み了える。
 購入の次第は、今月18日の記事、3冊を買うにアップした。



IMG_20200817_0001
 2019年10月31日、角川書店・刊。330首、著者・あとがきを収める。
 俵万智と皆川博子の帯文、島田修三と小島なおの栞文を得ている。
 歌壇の重鎮・佐佐木幸綱の次男でありながら、その威光に頼ることなく、食堂店員、書店員として働いている。しかし職業は、汚いものであったり、意に染まない本を売らねばならなかったりする。
 失恋に泣いたり、幼い恋をしたり、同居(同棲?結婚?)したりする。厳しい生活をしながら、良家に育った上品さは失わない。
 若さゆえに、父の威光を借りることを嫌ったのだろうが、僕は職に関して、借りれば良いと思う。僕の定年・再任用までの職もそうだった。
 なおこの歌集で、彼は第64回現代歌人協会賞を得た。


 以下に7首を引く。
道端に捨てられている中華鍋日ごと場所替えある日消え去る
口の端の薄きしょっぱさ朝焼けよこりゃあなんだよ誰が泣いてる
二十円引きのエクレア買ってきた君はひと口無料でくれる
日本語のない安すぎる缶詰とアサヒビールのプルタブを引く
友だちの受けしパワハラ聞きながら上手にホッケの骨をとれるかな
本や家具、君の笑った声などを詰め段ボール笑いはじめる
買われずに返品されてゆく本が夏の陽射しに熱持ち始む

 ブクログ記事を、短歌誌「心の花」さんがリツィートしてくださいました。

歌壇の重鎮・佐佐木幸綱の次男でありながら、その威光に頼ることなく、食堂店員、書店員として働いている。し...『歌集 月を食う』佐佐木 定綱 ☆4 https://t.co/OGrvgRnNcp #booklog

— 新サスケ (@terayamaf) August 25, 2020 ="https://parts.blog.livedoor.jp/img/usr/cmn/btn_add_twitter.png">



このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ