
綜合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2019年3月号を、短歌作品中心に読み了える。
到着は今月16日の記事「届いた4冊(2)」の、初めにアップした。リンクより、過去号の感想へ遡り得る。
巻頭作品20首では、佐佐木幸綱(以下、敬称・略)「岡本太郎の絵」に、老い初めた心境を詠むようで、心惹かれた。5首目の下句「時代か嘘か愛か怒りか」は、4句「時代の嘘か」としたかったかと、勝手に思い込む。「愛と怒り」は、若い頃の佐佐木幸綱のテーマだった。河出書房新社「佐佐木幸綱の世界」全16巻より、歌集篇すべてを読んだ頃が懐かしい。
特集「復刻してほしい歌集歌書」は、マニアックな本ばかりで、復刻されても読みたいものは殆んどない。
「作品12首」では、栗原寛「わが私小説」の3首目、「過去と過去すれちがはせる申し訳程度の笑みと会釈かはして」が、古い知人との遭遇を描いて、上品である。
「作品7首」では、稲垣紘一「「後期」保険証」の4首目「七十五歳の朝にまみえてヒリヒリと脱皮不全の身の置き所」に惹かれた。世への欲求が残って、隠居できないのだろう。
インタビュー・小島なお(聞き手 佐佐木定綱)は、同年齢の若者らしく、僕に不明の点も含めて、若者の歌について深く語り合っている。「基本的歌権」には表現尊重の意味で、賛成である。歌会で指導者が、あまりな評や改作をするのを、長く見て来たから。

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