
虫武一俊・歌集「羽虫群」kindle unlimited版を読み了える。
Amazonよりタブレットへのダウンロードは、先の5月13日の記事、入手した6冊(2)にアップした。
同じ新鋭短歌シリーズの読書は、先の5月10日の記事、小野田光・歌集「蝶は地下鉄をぬけて」に次ぐ。
概要
書肆侃侃房の「新鋭短歌シリーズ」の1冊。
単行本:2016年6月12日・刊。価格:1,836円。
kindle版:発行日・不明。価格:800円。
kindle unlimited版は、追加金・無料。
虫武一俊は、1981年・生。龍谷大学・卒業。
歌集「羽虫群」には、308首、石川美南・解説「だんだん楽しくなるいきどまり」、著者・あとがきを収める。
感想
レトリック(修辞)が上手すぎて、衝撃的な事を詠んでも、真実のインパクトが弱い。
会話体の多用がある。呼び掛けたい思いが強いのだろう。
「三十歳職歴なしと告げたとき面接官のはるかな吐息」と詠みながら、短歌の力の故だろう、短歌の会で批評し、職にも就け、恋も得たようだ。
啄木に繋がる、生活的弱者の系譜の歌人だっただろうか。短歌の救いを宣してまわっている僕には、好ましい例である。
引用
以下に7首を引く。
少しずつ月を喰らって逃げている獣のように生きるしかない
死にたいと思う理由がまたひとつ増えて四月のこの花ざかり
「負けたくはないやろ」と言うひとばかりいて負けたさをうまく言えない
謝ればどうしたのって顔ばかりされておれしか憶えていない
秋というあられもなさにわたくしを見下ろす女ともだちふたり
駅前の冬が貧しい できなさとしたくなさとを一緒にされて
逃げてきただけだったのににこにことされて旅って答えてしまう


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