思潮社・現代詩文庫155「続・辻征夫詩集」より、5番めの「河口眺望」全編を読み了える。
先行する、「ボートを漕ぐおばさんの肖像」から、は先の4月29日に記事にアップした。
「河口眺望」には、全16編の詩を収める。1993年、芸術選奨文部大臣賞、詩歌文学館賞を受賞した。
この詩集には、それほど優れた作品は多くなく、大きな賞にふさわしいかわからない。
ただ「おばさんには…たよりない子供の影も見えていて/その子がやがて/<ボートを漕ぐおばさんの肖像>という/いくつかの詩を書くのである」(「ボートを漕ぐおばさんの肖像」から、「遠い花火」より)と、少年時代の自分と大人の自分を、二重写しにして、ノスタルジーをそそる内容がある。
「河口眺望」では、「電車と霙の雑木林」で、電車に乗る「子供のときのわたくし」と40年後に同じ電車に乗る自分を重ねて、感慨を醸す。
「海雲台」、「孝子洞」、「豚祭」の3編は、韓国を訪れた際をテーマとし、庶民的な社会性とエロチシズムを描く。
「突然訪れた天使の日の余白に」の「一九三九年」の章では「わが家ではすでに長男が死んでいた/もしかれが死ななかったらぼくは/生まれなかったにちがいなくて」と、3つ前の詩集「鶯」の冒頭、「突然の別れの日に」のテーマの謎解きをするかのようである。兄の夭逝が、フィクションの可能性は残る。
戦後詩の「荒地」と「列島」の衰えのあと、評価されるに至った抒情詩人である。

写真ACより、「ビジネス」のイラスト1枚。


先行する、「ボートを漕ぐおばさんの肖像」から、は先の4月29日に記事にアップした。
「河口眺望」には、全16編の詩を収める。1993年、芸術選奨文部大臣賞、詩歌文学館賞を受賞した。
この詩集には、それほど優れた作品は多くなく、大きな賞にふさわしいかわからない。
ただ「おばさんには…たよりない子供の影も見えていて/その子がやがて/<ボートを漕ぐおばさんの肖像>という/いくつかの詩を書くのである」(「ボートを漕ぐおばさんの肖像」から、「遠い花火」より)と、少年時代の自分と大人の自分を、二重写しにして、ノスタルジーをそそる内容がある。
「河口眺望」では、「電車と霙の雑木林」で、電車に乗る「子供のときのわたくし」と40年後に同じ電車に乗る自分を重ねて、感慨を醸す。
「海雲台」、「孝子洞」、「豚祭」の3編は、韓国を訪れた際をテーマとし、庶民的な社会性とエロチシズムを描く。
「突然訪れた天使の日の余白に」の「一九三九年」の章では「わが家ではすでに長男が死んでいた/もしかれが死ななかったらぼくは/生まれなかったにちがいなくて」と、3つ前の詩集「鶯」の冒頭、「突然の別れの日に」のテーマの謎解きをするかのようである。兄の夭逝が、フィクションの可能性は残る。
戦後詩の「荒地」と「列島」の衰えのあと、評価されるに至った抒情詩人である。

写真ACより、「ビジネス」のイラスト1枚。

