風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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ペーソス

 昨日に到着を報せたばかりの、定道明さんの短編小説集「雪先生のプレゼント」を読み了える。
「雪先生のプレゼント」
 「雪
(せつ)先生のプレゼント」には、7編を収める。アマチュア作家同士の友情と相手の死を描く、「一人旅」がある。
 福井出身の詩人で、芸術院賞、恩賜賞を受け、芸術院会員の荒川洋治氏の生家を訪ねる「茅萱と小判草」では、案内のMさんが、山岳エッセイストM・迪男さんと推測されて楽しい。荒川洋治氏の家には、共に高校生だった頃、招かれた事がある。高見順の生家・墓地と共に、写真が残っている。僕の卒業間際にも招かれたようで、早稲田の角帽の荒川氏との2ショットが残っている。
 「餡パンを買いに行く」は、自動車運転免許証を返納して、シニアカーに乗る作者が、餡パンを買いにシニアカーで出かける話である。僕も車を辞めた(免許証は持っている)あと、外出が不便で困っている。
 「雪
(せつ)先生のプレゼント」は、かかりつけ医の女医・雪先生より、きれいな空き箱を貰う話である。ありがたさは、貰い物の箱が捨てられぬようになるまで、「遠い時間が必要だったのである。」。
 「DK虫」は、老いたせいか早起きの作者が、DK(ダイニングキッチン?)に籠る話から展開する。
 様々に、フィクションも混じるだろうが、老いての巧まないペーソスとユーモアに満ちている。


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 三浦哲郎のエッセイ集「おふくろの夜回り」を読み了える。
 入手は、先の11月10日の記事、入手した3冊を紹介する(5)にアップした。



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 「おふくろの夜回り」は、メルカリで見掛けた時、帯に「名文家が最後に遺した言葉」とあるから、注文した。遺稿、あるいは少なくとも単行本未収録の、エッセイを集めた本かと思った。
 届いてみると、文藝春秋「オール読物」に30数年に渉って載せたエッセイ47編と、日経新聞に載せた1編、それも総て単行本収録の作品で、没する直前に刊行された。看板に(この場合は、キャッチコピーだけれども)偽りあり、と言わざるを得ない。その後も、小説、エッセイは刊行されている。ネットで見て、内容を確認できないまま、説明(帯文を含む)だけで買うのだから、紛らわしいことは止めてほしい。


 48編は、ペーソスとユーモアを含んだ、三浦哲郎の得意の短文である。「挨拶」、「酔客」と掌編小説仕立ての作品もある。老い、病気、回想の文章が多く、三浦哲郎の晩年を偲ばせる。
 作家の死が報じられた時、短編小説等の名手として、惜しい人を亡くしたと、詩の仲間と嘆いたものである。
 なお生前に自選全集(新潮社、13巻)を刊行したせいか、2010年に没して今に至るも、全集の刊行されていないことは、恨みがましいことである。


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