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 先の5月27日の記事、入手した5冊と1誌で紹介した内、村上春樹のエッセイ集「村上ラヂオ3 サラダ好きのライオン」を読み了える。
 昨年3月16日の記事、「同2 おおきなかぶとむずかしいアボカド」に次ぐ。
概要
 初出は、女性週刊誌「アンアン」の連載である。1年間に発表された52編を集めて、3冊めとなる。
 「同2」と同じく、マガジンハウス社から単行本化された。
 新潮文庫、2016年5月1日・刊。挿し絵(銅版画)大橋歩。
感想

 若い女性が、村上春樹のエッセイを、どのような思いで読んだのだろう。作者も「まえがき」で、「両者のあいだには共通する話題なんてほとんど存在しない(はずだ)」と書いている。
 オジサンが面白く書いているエッセイと読むのか、内容が意外と重いので、大作家が人生を語っていると読むのか。
 語り口の軽さに反して、内容は重い。「愛は消えても」では、遭難救助の順を幾度も譲って自身は亡くなったアメリカ人男性の話題を取り上げて、親切心について考察する。
 「裁判所に行こう」では、裁判員制度で裁判員が量刑(死刑を含め)まで決める事に疑義を呈している。

 流行作家の売れそうな本を、大出版社が占めている事に疑問を持つ。出版社のメジャー度は、売れゆきに関わるだろう。でも、おこぼれや新人の作品・翻訳を中堅出版社が拾い、1本勝負を賭けるのは、出版界として健康的でない。

 1時は騒がれた電子書籍も、旧勢力の抵抗に由るのか、優れた作品を揃えられなく、ノウハウ本かインディーズ作家の本が多くて、隆盛とは呼べない現状は残念である。読書界の再興になると思っていたけれども。