風の庫

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リアル

 思潮社の現代詩文庫155「続・辻征夫詩集」より、詩集「ヴェルレーヌの余白に」全編を読み了える。
 先行する「鶯」から、は今月20日の記事にアップした。


 「ヴェルレーヌの余白に」(1990年、思潮社・刊)は、16編の詩を収める。
 「これはいにしえの嘘のものがたりの」は、同級生だった女の子が芸妓になり、水揚げの日、悪友4人が集まって初めて大酒を飲み、げろを吐いたと言う、同級生の友情の物語である。もちろんフィクションの可能性が高い。
 「蛇いちご」は性の和合、「六番の御掟について」は性の不和の、象徴のように読める。
 表題作の「ヴェルレーヌの余白に」は、題名の優雅さに似つかない結末となる。「をぐらき庭のかたすみに/襤褸のごとく/われは吐瀉物にまみれて凍へてをりぬ。……」。次ぐ「レイモンド・カーヴァーを読みながら」も、酔いの失態を思い出している作品である。
 「春の海」は、「春の海ひねもすのたりのたり哉」から海獣「ヒネモス」を、カラスの古巣の歌詞から「フールス」をひねり出したりしながら、苦しい失恋を描いている。これは後の作品によると、リアルな経験だったらしい。
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写真ACより、「ビジネス」のイラスト1枚。



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「歌壇」8月号
 今月14日の記事、届いた2冊(8)で紹介した内、綜合歌誌「歌壇」2019年8月号を、短歌作品中心に読み了える。
 同・7月号の感想は、今月5日の記事にアップした。リンクより、関連過去記事へ遡れる。
概要
 2019年8月1日付け、本阿弥書店・刊。169ページ。定価:800円(税込み)。定価の維持には感服する。
 短歌は1ページ1段、散文は1ページ2段となっている。
感想

 特集は、「第一歌集の批評会の思い出」である。当時は、とても厳しい批評が出たと読んでいる。
 僕は歌集を持っていないけれども、5冊の詩集を出しており、福井県詩人懇話会の合同批評会を設けてもらった事がある。そのおり、内容と関わりなく酷評する詩人がいて、険悪な関係となった。詩人懇話会でも「詩集批評会」から「詩集を祝う会」と名前を替え、著者へのインタビュアーのインタビューが主となって、酷評は収まっているかの感がある。酷評は、何らかのコンプレックスを背後に持つようだ。
 「作品7首」の中に、僕が属する「覇王樹」の金澤憲仁さんの「令和元年の相双にて」7首が載っている。小歌誌に拠る歌人の歌を取り上げることは、歌壇のまた「歌壇」誌の希望である。
引用
 その「令和元年の相双にて」7首より、1首を引く。
バリケードに塞がるる家つらなるを帰還困難区域へ見過ぐ
 福島原発事故の現状を、弛みなく、リアルに詠んでいる。


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