風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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事件

 三浦哲郎の長編小説「素顔」(講談社文庫、1980年・刊、346ページ)を読み了える。
 三浦哲郎の小説を読むのは、今年1月24日に記事アップした、「夜の哀しみ」(上下巻)以来である。


三浦哲郎「素顔」
 「素顔」は1度、読んだ事がある気がしたが、このブログでも、前のブログ「サスケの本棚」でも検索に引っ掛からないので、初めてだろう。冒頭部を何度も読んで、記憶に残ったのかも知れない。
 長編小説といっても、連作短編集に似て、12章より成っている。作家の馬淵、妻の菊枝、長女の珠子、次女の志穂、3女の七重、ブルドッグのカポネ、の1家に湧く騒動(いずれもハッピーエンドでおわる)を描く。長女が痴漢に遭いそうになったり、馬淵に助力を得たい文学青年に家の周りを徘徊されたり、郷里の同級生が亡くなって弔辞を読んだり、様々な事件が現れる。
 しかしこの中にも書かれているが、作家の2人の姉の自死、2人の兄の失踪は、背景にあり、それらの小事件が解決されてみれば、家族は(郷里の母を含め)平穏で幸福な生活と見える。
 三浦哲郎が最後まで、原稿用紙に万年筆で執筆したのかと思うと、僕にも感慨がある。


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 本阿弥書店の綜合歌誌「歌壇」2019年10月号を、ほぼ読み了える。
 到着は今月18日の記事、入手した4冊(4)にアップした。

3・歌壇・10月号
 特集は「平成の事件と短歌」である。
 総論として、三枝昂之「「品格」が流行となるこの国の暮れ」。重大事件の他に、岡井隆の敗戦革命を否定する歌、平成不況の失われた20年、沖縄問題、高齢化の介護問題をも、今後を見据えて論じている。
 6名による「記憶に残っている事件詠10首選」と短文。良くも悪くも、当時の短歌は勢いがあった。令和時代となって、忖度するのか、公言しない。
 座談会「平成の事件と短歌 ―地下鉄サリン事件を端緒として―」。年代の違う男女2人ずつが、平成の時事詠を論じる。連合赤軍の坂口弘やオウム事件死刑囚の中川智正の歌を取り上げて「短歌という形式は、自己救済につながってしまうんじゃないか」と、議論されたという。短歌に救いを求める僕には、ショッキングである。吉川宏志は、「集団に入ることによって、自分たちだけ救われればいいと考えることは、何か邪悪なものを生み出してしまう、ということは、この事件から学んだ気がします。」と述べて、暗に結社や歌壇を批判するかのようである。
 時事をほとんど詠まず、生活を詠み続けた僕の歌にも、重大事件の影は及んだと思う。

 付箋を貼った数首があり、紹介したいけれども、ここで僕の感想を了いとする。



 

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