風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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今村夏子

 最近に手許へ届いた2冊を紹介する。
 まず所属する結社歌誌「覇王樹」の、2021年8月号が届いた。
「覇王樹」8月号
 同・7月号の感想は、今月5日の記事にアップした。リンクより、旧号の感想へ遡れる。


 もう1冊は、今村夏子「父と私の桜尾通り商店街」がAmazonの、ほしい物リストに残っているのを見つけて、メルカリの古本を、わずかなメルペイ残高とクレジット決済で買った。
父と私の桜尾通り商店街
今村 夏子
KADOKAWA
2019-02-22

 題名に惹かれたのだが、同題の作品を含む、短編小説集らしい。
 2019年、「むらさきのスカートの女」で芥川賞を受賞する、直前の作品集である。
 「むらさきのスカートの女」の感想は、2019年10月31日の記事にアップした。

 リンクより、他の作品の感想へ遡れる。
 2010年にデビューして、現在まで6冊刊行と、彼女はどうも寡作らしい。








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 12月8日(第2火曜日)午前10時より、和田公民館にて和田たんぽぽ読書会12月例会が持たれた。
 11月例会を僕は医療診断のため欠席し、10月例会は臀部痛で途中退席したため記事アップしなかったようだ。9月例会(9月9日)の記事が残るのみである。



むらさきのスカートの女

 今回の課題図書、今村夏子「むらさきのスカートの女」を僕は既に読んでおり、2019年10月31日の記事をプリントして持参した。



 今回の参加者は、10月かより参加のI・Mさんを含め、8名の全員参加だった。I・Yさんの司会で始まり、事務局のA・Tさんより11月14日の文学散歩の報告、1月の新年読書会・食事会の相談があった。
 読書感想は、僕より始まり、ほぼプリントの結末部分を述べた。格差社会の弱者が、なかなか上へ這い登れない仕組みだとも。
 T・Rさんは、最近よくありそうな題材だ、無常・はかなさ・切なさを感じると述べた。表紙のスカートからはみ出る4本の足、裏表紙の黒い林檎のイラストは、何を表すかと問いかけた。表紙のイラストは、「むらさきのスカートの女」も「黄色いカーディガンの女」も、同じ仲間だと示すのだろうと結論になった。黒い林檎の謎は、解けなかった。
 M・Mさんは、若い世代の女性作家が続くが、拒否しようと思わない、今を生きる若い世代の体験、思いを描いて、分かりやすいとした。
 A・Tさんは、ホテル管理業務員へ「むらさきのスカートの女」を誘わなくて良かったのではないか、人にしつこく関わるのも考えものだ、という感想だった。

 O・Tさんは、「カーディガンの女」が皆の事を観察しているのが怖ろしい、と述べた。
 I・Mさんは冷静で、この小説はフイクションであり、芥川賞を狙って書かれたとの感想を述べた。
 I・Yさんは、「黄色いカーディガンの女」が「むらさきのスカートの女」と親しくなろうとしながら、表立っては近づかなかった点を上げた。
 A・Kさんは、所長が死んでもいないのに「むらさきのスカートの女」を逃げ出させ、「黄色いカーディガンの女」が同じ立場になった結末を上げた。

 1月例会の課題図書を分け、消毒・清掃の中、僕は妻が待っている時間なので、早引けさせてもらった。



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 今村夏子の芥川賞受賞作「むらさきのスカートの女」を読み了える。
 朝日新聞出版、2019年7月10日・2刷。

むらさきのスカートの女
 到着は今月22日の記事、届いた3冊を紹介する(6)で報せた。リンクより、「こちらあみ子」、「あひる」の感想へ遡れる。



 「むらさきのスカートの女」は、時期によって働いたり働かなかったりする「むらさきのスカートの女」を、家賃の工面を諦めた、「黄色いカーディガンの女」わたしが、ホテル清掃業務員へ誘う話である。「むらさきのスカートの女」は、飲み込みも良く、職場の受けも良く、5日目でトレーニング終了となる。しかし所長と不倫を始め、備品をバザーに出したと疑われ、仲間喧嘩から逃げ出してしまう。アパートを訪ねた所長を彼女が突き飛ばし、倒れた所長を「わたし」は死んだと嘘をつき、逃亡させる。「わたし」は彼女の後を追って共に暮らすつもりだったが、彼女と行きはぐれる。
 これは低所得者を笑っているのではない。いったんは体制側に入りながら、無邪気さ(それは公園で子供たちと遊ぶ場面で繰り返し示される)故に、体制から落ちこぼれる女性を描いて、小説の反権力性を示している。弱者の誉れと悲惨を、微かなユーモアを含ませて、丹念に描く。



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 最近に手許に届いた本3冊、6回めの紹介をする。
 先行する同(5)は、先の8月12日の記事にアップした。

 
 その3冊の内、羽生善治「直観力」はまだ枕頭近い本立てにあるが、他の2冊は読み了えて、ここに記事アップした。
 今月15日に、綜合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)11月号が届いた。

歌壇11月号
 これまで値上げを我慢して来たが、消費税増税もあり耐えられなかったのだろう、1冊800円から900円に値上げになった。
 翌日16日、今年12月号~来年5月号の半年分、購読予約の代金を、付属の無料の郵便振替用紙で送った。2,3日後に本阿弥書店より、「前金切のお知らせ」と歌集10%割引の注文葉書が届いた。
 同・10月号の感想は、先の9月25日の記事にアップした。

 
 10月19日に、2冊が届いた。
 まず芥川賞を受賞した、今村夏子「むらさきのスカートの女」である。

むらさきのスカートの女
 彼女の小説は、新興宗教からみの「星の子」で躓いていたが、受賞本作は優れていると、ブロ友の記事に紹介された。メルカリで探して、600円弱(税・送料・込み。定価:1,300円+税)で買った。
 彼女の「こちらあみ子」と「あひる」を既に読んでいる。
 「あひる」の感想をリンクするので、リンクより「こちらあみ子」の感想に遡れる。

 
 もう1冊は、結社歌誌「覇王樹」の同人、渡辺茂子さんが贈ってくださったエッセイ集「落とし文」である。
渡辺茂子 落とし文
 2019年8月17日・刊。221ページ。
 「覇王樹」と「関西覇王樹」に連載したエッセイ、106編を収める。
 受贈した彼女の第2歌集、「湖と青花」の感想は、今月5日の記事にアップした。

 



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 最近に手許に届いた、1冊と2誌を紹介する。
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 今村夏子の初めての長編小説「星の子」(単行本)が届く。
 同「あひる」を読むは、今月13日の記事にアップした。

 朝日新聞出版・刊。2017年3刷。
 これは失敗だった。内容は「あやしい宗教」に関わるものだった。僕は宗教嫌いである。
 「親しくない人と、宗教と政治の話はするな」と言われるが、本当だった。
 Amazonの古本を買ったのだが、カスタマーレビューを読んでいたなら、買わなかっただろう。少しネタバレ承知で、カスタマーレビューを読むべきと知った。

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 本阿弥書店より、綜合歌誌「歌壇」2019年7月号が、6月17日に届いた。
 11月号分まで、前払いしてある筈。
 角川「短歌」、「短歌研究」など、毎月読んでいる綜合歌誌に由って、詠む歌風も変わるのだろうか。

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 COCOONの会より、季刊同人歌誌「COCOON」Issue12が、6月17日に届いた。
 短歌が(文学が)苦しい時代に、若手歌人(1965年以降・生まれ)が、どう踏ん張っているか、読みたい歌誌である。


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 今村夏子の短編小説集「あひる」を読み了える。
 6月10日の記事、同「こちらあみ子」に次ぐ。

 角川文庫、2019年1月25日・刊。
 短編小説「あひる」、「おばあちゃんの家」、「森の兄妹」、3編を収める。
 「こちらあみ子」(旧題「あたらしい娘」)に次いで、「あひる」は芥川賞候補となり、河合隼雄物語賞を受賞した。

「あひる」

 両親と住む「わたし」の家の鶏小屋で、あひるを飼う事になる。「わたし」は医療系資格の勉強中で、まだ仕事をした事がない。あひるに惹かれて、子供たちが集まるようになり、両親も歓迎する。あひるが1ヶ月程で病気になり、病院に父が連れて行き、帰って来るが、わずかに違うように「わたし」には思われる。3回めが死に、庭に墓を立て、3羽が違う鳥であったと両親の偽計がバレる。
 10年前に家を出た弟が、結婚8年めで子を儲けて帰宅する事になり、家の増築工事の場でおわる。
「おばあちゃんの家」
 主人公「みのり」の家族とは血のつながらない、おばあちゃんが敷地内の建物・インキョに住んでいる。親切なおばあちゃんだが、痴呆(?)が始まり、逆に知的・体力的に元気になる様を描く。
「森の兄妹」
 母子家庭の兄妹、モリオとモリコが、小屋に住むおばあさんから、窓を通して飴を貰ったり、実る枇杷の実を全部持って行って良いと言われる。おばあさんの家で、その家族より誕生日祝いされるのをモリオが目撃して、兄妹は小屋に行かなくなる。

 子供たち、非就業者、おばあさん(高齢者)、それぞれ1人前に見做されない者たちと、その周囲を描いて、現代の1面を切り取っている。





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 今村夏子の短編小説集「こちらあみ子」を読み了える。
 入手は、先の5月27日の記事、入手した5冊と1誌で報せた。
概要
 ちくま文庫、2017年7月30日・6刷。
 初めての作家さんである。ブクログか読書メーターでとても誉められていて、同氏の「あひる」(角川文庫)と共に、メルカリで購入した。
 この本には、太宰治賞、三島由紀夫賞をW受賞した「こちらあみ子」と、「ピクニック」、「チズさん」の3短編小説を収める。
「こちらあみ子」
 田中あみ子と孝太の兄妹に継母が来るが、妹を死産した時、あみ子は木札の墓を立ててしまい、それを契機に継母は心の病気に、兄は不良少年となってしまう。
 あみ子が慕い続けた、のり君に殴られて前歯を3本折ってしまうが、差し歯を拒否するのは不自然である。あみ子は兄の威光などで苛められずに済んだが、中学卒業と共に、祖母に預けられてしまう。
 多動症とかADHDという言葉のなかった時代だろうが、子供が純粋であるが故の多難を背負ってしまう。
「ピクニック」
 売り出し中のスターの恋人だと語り行動し続ける七瀬さんと、仲間の少女たちの友情、彼女の嘘がバレての後が描かれる。表立っては描かれないが、家族・恋人のいない女性の、虚構に縋る心情が哀れである。
「チズさん」
 独居のおばあさんチズさんの誕生日祝いに、世話をしている「私」が訪れると、子夫婦と歌手志望の男孫が訪れて、「私」の隠れている間に大騒ぎをする。「私」はチズさんをわが家に引き取ろうとするが、土壇場でチズさんが未練を見せて、頓挫する話である。純粋な思いが、多くは通らない世間を表わすようだ。


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