うずく、まる
 kindle本の中家菜津子・詩歌集「うずく、まる」を、タブレットで読みおえる。
 今月13日の
記事(←リンクしてあり)、「頂いた本と買った本、5冊」で紹介した内、最後の5冊めを読みおえた事になる。
 元版は、2015年6月、書肆侃侃房・刊。
 短歌群と詩群を繋ぎ合わせた詩歌集である。
 短歌に節の題なく、詩に題なく、1冊をもって1作品とするようだ。
 題名の奇妙な切れ方に惑わされそうだが、「うずく」も「うずくまる」も、痛みの表われである。
 写実の作風ではないので、細かな事はわからないが、辛い恋をし、のちに結婚・出産を経たようだが、そのあとはわからない。
 ネットの詩歌梁山泊「詩客」の詩歌トライアスロンに応募し、「現代詩手帖」に掲載された事が出発だったと、「あとがき」で彼女は述べている。
 僕は電子書籍に違和感はなく、むしろ紙本より読みやすいくらいだが、表示の拡大・縮小の仕方を見つけるのに苦労した。
 以下に5首と2節を引く。
あれからの日々を思って鉢に撒く期限の切れたミネラルウォーター
火を飼ったことがあるかとささやかれ片手で胸のボタンをはずす
ストライプシャツの袖口折りかえし右手をつなぐ左手に歌
からだごと君にあずけたゆるやかに右へふくらむカーブにゆれて
気怠さの理由は君にはわからない洋梨ふたつの重さかかえる

かあさん かあさん おかあさん ふりつもるよびごえ
子宮に眠る地球では星が降りしきっているよ

微熱からとけだしてくる哀しみに
  トレモロの点滴をうつ午後
病室の煽り窓から雨だれが
  鳥の見ている夢へと落ちる

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