風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

修辞

 筑摩書房の「ウンガレッティ全詩集」(河島英昭・訳)より、第4詩集「約束の地」を読み了える。
 第3詩集「悲しみ」は、今月16日の記事にアップした。



 詩集「約束の地」の題には、(1935年―53年)と付されている。
 全詩集版で23ページの、これまでとは薄い詩集である。
 中心となる「ディードーの心のうちを描いたコロス」は、19章より成る。ディードーはウエルギリウスの古代ギリシャ悲劇「アエネーイス」のカルタゴの女王で、トロイアの英雄・アエネーイスに見放されて、自死を選んだ。コロスは古代ギリシャ劇の、後方で歌う合唱隊である。
 この詩集の原書には自注と解説が付いており、この本では自注が訳出されている。
 第2次大戦下イタリアの、理性的な真実が幕を閉じてゆく様を、難解な(自由な)修辞(レトリック)で描いて、政権にも大衆にも、わからない作品だっただろう。戦後も兵士たちを悪の死とは、決めつけられず、嘆くかのようである。

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写真ACより、「秋の人物コレクション」のイラスト1枚。


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虫武一俊・羽虫群
 虫武一俊・歌集「羽虫群」kindle unlimited版を読み了える。
 Amazonよりタブレットへのダウンロードは、先の5月13日の記事、入手した6冊(2)にアップした。
 同じ新鋭短歌シリーズの読書は、先の5月10日の記事、小野田光・歌集「蝶は地下鉄をぬけて」に次ぐ。
概要
 書肆侃侃房の「新鋭短歌シリーズ」の1冊。
 単行本:2016年6月12日・刊。価格:1,836円。
 kindle版:発行日・不明。価格:800円。
 kindle unlimited版は、追加金・無料。
 虫武一俊は、1981年・生。龍谷大学・卒業。
 歌集「羽虫群」には、308首、石川美南・解説「だんだん楽しくなるいきどまり」、著者・あとがきを収める。
感想

 レトリック(修辞)が上手すぎて、衝撃的な事を詠んでも、真実のインパクトが弱い。
 会話体の多用がある。呼び掛けたい思いが強いのだろう。
 「三十歳職歴なしと告げたとき面接官のはるかな吐息」と詠みながら、短歌の力の故だろう、短歌の会で批評し、職にも就け、恋も得たようだ。
 啄木に繋がる、生活的弱者の系譜の歌人だっただろうか。短歌の救いを宣してまわっている僕には、好ましい例である。
引用

 以下に7首を引く。
少しずつ月を喰らって逃げている獣のように生きるしかない
死にたいと思う理由がまたひとつ増えて四月のこの花ざかり
「負けたくはないやろ」と言うひとばかりいて負けたさをうまく言えない
謝ればどうしたのって顔ばかりされておれしか憶えていない
秋というあられもなさにわたくしを見下ろす女ともだちふたり
駅前の冬が貧しい できなさとしたくなさとを一緒にされて
逃げてきただけだったのににこにことされて旅って答えてしまう




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 福井県俳句作家協会「年刊句集 福井県 第57集」(2019年3月20日・刊)より、7回めの紹介をする。
 今月14日の記事、同・(6)に次ぐ。
概要
 総304ページの大冊であり、作品集も試算によると、408名、4,080句に及ぶので、紹介を数回に分けざるを得ない。
 また副題に、「平成30年版」と銘打っていて、2018年1年間の吟である事を、実直に示している。
感想
 今回は南越地区(越前市、南越前町)の、159ページ~190ページ、32ページの630句を読んだ事になる。
 大衆詩としての俳句に、高度な修辞(レトリック)は、必ずしも必要ではない。例えば「夕星の零るるように梅咲けり」などは、比喩が嫌味である。
 短い詩型なので、新しい題材は必須である。ただし世間で話題になってより、俳歌に定着するまで、数年を要するようだ。
引用

 以下に5句を引く。
女子会の席の華やぎ晩夏光(Y・富鼓)
初詣歩幅の小さき母連れて(Y・七重)
紫陽花や知らぬふりした母の恋(H・みえ)
告げられず見つめるだけで卒業す(I・千鶴子)
ルビ付きの名前のあまた蓮の花(Y・浩江)
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。



 
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