風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

俵万智

 俵万智の最新・第6歌集「未来のサイズ」を読み了える。僕は彼女の歌集を、すべて読んで来た筈である。
 入手は、今月10日の記事、届いた2冊を紹介しする(17)にアップした。入手の経緯は、リンクを参照してください。



未来のサイズ
 2020年9月30日、角川書店・刊。418首、著者・あとがきを収める。
 全体は3章より成り、Ⅰ 2020年はコロナ禍の現在を、Ⅱ 2013年~2016年は石垣島時代を、Ⅲ 2016年~2019年は宮崎県での、詠んだ歌となる。
 Ⅰでは、コロナ禍を怖れつつ、自粛期間を楽しもうとする歌がある。以下に2首を引く。
朝ごとの検温をして二週間前の自分を確かめている
ほめかたが進化しており「カフェ飯か! オレにはもったいないレベルだな」
 Ⅱでは、大事な人の見送り、島での心豊かな生活、社会への嘆きに似た怒り、などを詠む。以下に2首を引く。
見送りは心ですますと決めたから畑にニラを摘む昼下がり
どこんちのものかわからぬタッパーがいつもいくつもある台所
 Ⅲでは、宮崎県に移り、中学校の男子寮に入った息子、ホームの父母、父親となった弟らに気を配る。以下に2首を引く。
日に四度電話をかけてくる日あり息子の声を嗅ぐように聴く
草食系男子となりし弟がそこそこ進むイクメンの道

 なおこの歌集には、社会批判・政治批判を詠んだ歌があるが、僕の希望としては、散文で展開してもらいたい。


 

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 最近に手許に届いた2冊を紹介する。
 県内にお住まいの詩人・立石百代子さんが、絵本「喰うな!おれのだ!」を送って下さった。

喰うな!おれのだ!
 能登印刷出版部・刊、2020年9月10日・2刷。30ページ。
 親・娘・孫、3人の協力での出版である。
 A4判よりやや大きく、僕の多機能プリンタで表紙をスキャンできるかと危ぶんだが、ぎりぎりの大きさでスキャンできた。

 俵万智・歌集「未来のサイズ」の刊行を知り、読みたくなって、メルカリの新刊部より、メルペイ残高で購入した。

未来のサイズ
 角川書店、2020年9月30日・刊。価格:1,540円(税込み)。
 カバーの歌を読んで、俵万智が多行書きに転換したかと、ファンが嘆くことはない。本文では、1首1行の歌ばかりである。





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 総合歌誌「短歌往来」2020年9月号、Kindle Unlimited版を、ほぼ読み了える。
 入手は、今月28日の記事にアップした。



短歌往来9月号
 2020年8月15日、ながらみ書房・刊。
 入手紹介で、捨て身のKindle Unlimited化と書いたのは、紙本の定価が850円なのに対し、Kindle Unlimited本は1ページ0・5円くらいで、全部読んでも1冊100円か200円にしかならないからだ。若い編集人・佐佐木頼綱の決断だろうか。

 特集は「子育て&子供のうた」。「子育て」と「子供」を並立させる志向に異論もあった。
 短歌5首と短文だが、俵万智の「餃子の時間」では、一人息子が高校生になっていて楽しい。子がトラブルを抱えている場合も多いようだ。

 連作、知らない歌人の歌、楽しく読んだ。
 手軽に新しい短歌に接することを望んでいるので、Kindle Unlimitedで短歌を読めるのは嬉しい。


 
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 穂村弘の新歌集「水中翼船炎上中」を読み了える。
 購入は、今月18日の記事、3冊を買うにアップした。



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 2018年5月21日、講談社・刊。328首、著者・あとがき、別刷・メモを収める。箱入り。
 第4歌集だが、僕はこれまで読んだことがなく、歌誌の掲載作や引用で読んで来たのみである。

 子供時代、思春期に固執して、回想の歌を多く創っている。僕は農家の次男だったので、それらへの執着はない。幾つかの懐かしい思い出はあるけれども。
 母の挽歌や現在の歌では、リアリティのある作品がある。真実味のある作品に惹かれる。
 ニューウェーブの歌は、戦後の前衛短歌の、俵万智・以降版と呼ぶべく、軟弱に見えるけれども、彼らへの時代的要請もあったのだろう。


 以下に7首を引く。
窓ひとつ食べて寝息をたてているグレーテルは母の家を忘れて
助けてと星に囁く最悪のトイレットペーパーと出会った夜に
ナタデココ対タピオカの戦いを止めようとして死んだ蒟蒻
アルコール、カロリー、糖質無しというビールの幽霊飲んでしまった
母のいない桜の季節父のために買う簡単な携帯電話
わはははと手を打ち終えた瞬間にぶごといびきをかいている父
ハミングって何と尋ねてハミングをしてくれたのに気づかなかった


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 佐佐木定綱の第1歌集「月を食う」を読み了える。
 購入の次第は、今月18日の記事、3冊を買うにアップした。



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 2019年10月31日、角川書店・刊。330首、著者・あとがきを収める。
 俵万智と皆川博子の帯文、島田修三と小島なおの栞文を得ている。
 歌壇の重鎮・佐佐木幸綱の次男でありながら、その威光に頼ることなく、食堂店員、書店員として働いている。しかし職業は、汚いものであったり、意に染まない本を売らねばならなかったりする。
 失恋に泣いたり、幼い恋をしたり、同居(同棲?結婚?)したりする。厳しい生活をしながら、良家に育った上品さは失わない。
 若さゆえに、父の威光を借りることを嫌ったのだろうが、僕は職に関して、借りれば良いと思う。僕の定年・再任用までの職もそうだった。
 なおこの歌集で、彼は第64回現代歌人協会賞を得た。


 以下に7首を引く。
道端に捨てられている中華鍋日ごと場所替えある日消え去る
口の端の薄きしょっぱさ朝焼けよこりゃあなんだよ誰が泣いてる
二十円引きのエクレア買ってきた君はひと口無料でくれる
日本語のない安すぎる缶詰とアサヒビールのプルタブを引く
友だちの受けしパワハラ聞きながら上手にホッケの骨をとれるかな
本や家具、君の笑った声などを詰め段ボール笑いはじめる
買われずに返品されてゆく本が夏の陽射しに熱持ち始む

 ブクログ記事を、短歌誌「心の花」さんがリツィートしてくださいました。

歌壇の重鎮・佐佐木幸綱の次男でありながら、その威光に頼ることなく、食堂店員、書店員として働いている。し...『歌集 月を食う』佐佐木 定綱 ☆4 https://t.co/OGrvgRnNcp #booklog

— 新サスケ (@terayamaf) August 25, 2020 ="https://parts.blog.livedoor.jp/img/usr/cmn/btn_add_twitter.png">



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 総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2020年7月号を、ほぼ読み了える。
 到着は今月19日の記事、届いた5冊(2)で報せた。
 同・6月号の感想は、先の5月24日の記事にアップした。リンクより、過去号の感想へ遡れる。




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 今号は、新型コロナウイルスに関わる歌が多い。緊急事態宣言、マスク問題は致し方ないとしても、トイレットペーパー、消毒剤、小麦粉までストアの棚から消えるという愚を演じた。主婦は止むを得なかったのであり、仕掛けたのはマスコミか業者か。

 巻頭20首では、俵万智の歌がすべて、コロナ禍に関わるものであり、災害に敏感だと思う。久しぶりに俵万智の歌に接して、発見はその事ではない。「多し」「しており」「ぬ」など、古語が混じる事である。今の若い歌人は、完全口語体を採っている人がいて、僕の歌もその方向を目指している。

 大松達知の「とおくとおく」20首では、「起きてた?と娘は言えり生きてた?と聞こえていたり肌寒き春」のように、現役労働者の苛酷さが伝わってくる。

 永田和宏・インタビュー「ウイルスとの向き合い方」は、生物学者・歌人の見解として有効だった。



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 7月6日のサラダ記念日が過ぎ、七夕が過ぎ、7月11日を迎えようとしています。
 僕の本棚には、「サラダ記念日」が、なぜか4冊ありますが、抜き出して来た帯付き本は、1987年、275版です。
 ベストセラーとなってしばらくして、僕も買いました(流行には危険を感じて、しばらく安全を確かめる性格)。
 第1歌集は240万部売れ、吉本隆明は「文学現象を越え、社会現象だ」と述べていました。
 時はバブル期(拙作「「明るさは滅びの徴し」バブル期のかつてのある日ふと怖れにき」)。
 あの吉本隆明が、「このあと、われわれは死後の世界へ入るのだ」と(僕の記憶に間違いなければ)叫んで(著書で)いた時代です。
 「サラダ記念日」掉尾の歌は、「愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人」です。
 第2歌集は40万部だったそうで、200万人はどこへ行ったのでしょうね。
 俵万智はその後、不倫、シングルマザー、仙台移住、沖縄へ避難、宮崎県移住と、私生活では花盛りでは無かったようです。
 ただし俵万智の評価は高く、ファンも多いようです。
 先の7月6日には、サラダ記念日30周年の集いが執り行われた、とか聞いております。文学誌の記念号も発行されました。
 そして僕は、短歌を詠んでいます。(タブレットより、起稿しました)。
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写真ACより、「お花屋さん」のイラスト1枚。



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