風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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全否定

 岩波文庫のアストゥリアス「グアテマラ伝説集」(牛島信明・訳)より、3回めの紹介をする。
 同(2)は、今月17日の記事にアップした。リンクより、過去記事へ遡り得る。


 今回は、「「花咲く地」の財宝の伝説」と「春嵐の妖術師たち」、2編を読んだ。

 「「花咲く地」の財宝の伝説」は、部族間の争いなどをしていた先住民が、白人の侵略に遭い、金銀宝石の財宝を山裾に隠そうとする。白人の銃撃で、先住民は財宝を放り出して逃げてしまうが、火山噴火によって財宝は隠されるという伝説である。実際は征服者の本国・スペインへ送られたのだろうが、現代のグアテマラ人として、アストゥリアスはスペイン人を全否定できないのだろう。

 「春嵐の妖術師たち」では、古代の幾つもの文化が、地震、噴火、洪水によって壊滅しながら、再生する様を描くようだ。様々な描写が試みられるが、ロートレアモン、アンドレ・ブルトン式(共に僕は嫌いである。)のシュールリアリズム(戦後に実存主義と合体するまでは、つまらない)ではなく、金銀宝石や刺青、化粧、花鳥など、南国らしい古代文化の妖しい美しさの再現を読むべきなのだろう。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラストのラスト1枚。


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 季刊同人歌誌「COCOON」Issue14を、ほぼ読み了える。
 到着は今月10日の記事、ブックカフェで1冊と、送られた1冊、に報せた。



 同・Issue13の感想は、今年10月24日の記事にアップした。


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 「COCOON」は、結社「コスモス」内の若手歌人(1965年以降生まれ)による、季刊同人歌誌である。
 Issue14は、2019年12月15日、COCOONの会・刊。87ページ。定価:500円(送料込み)。


 巻頭32首4名の初め、O・淳子さんの「湖底の声」では、夫とのすれ違いなど違和を感じながら、過去を全否定して、切り抜けようとする。
 O・達知さんの「トリガー」32首では、「新人教師に戻らなくてよい」とせめて己を慰め、「撫で撫でしてくれる娘」や妻の家庭に慰められている。
 K・絢さんの「コーヒー」12首では、育休明けの地味な仕事ぶりと、子恋しさを詠んで、ワーキング・ママの切実さがある。
 S・ちひろさんの「兎の肖像」12首には、幼い子が蟬に死を知るなど、成長する寂しさを描くようだ。
 N・まさこさんの「シャリンバイ」12首では、夜間学校に通う生徒が下校を渋るなど、問題を抱えている様を示す。
 K・なおさんの短歌評論「太る歌」では、身の太る事に拘る短歌を取り上げて、歌人の、社会の意識を一端から捉える。
 壮年現役世代は、苦しみながら諦め、戦後民主主義教育の以降の教育(道徳教育、神話授業など)を受けた世代はあっさりと世を受け止めているようだ。


 以下に4首を引く。
雨が降るかもしれないとスクショした天気アプリをツイッターに貼る(S・ユウコさん)
この町は電柱なきゆゑ曇り日の空が重くて歩きづらいよ(S・美衣さん)
鼻声のなまむみなまもめなまたまも 金木犀は雨に散りたり(S・なおさん)
幼な子を人に預けて暗がりにエックス線を照射してゐる(M・恵子さん)



 


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