風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

全詩集

 新潮社「川端康成文学賞 全作品 Ⅰ」より、富岡多恵子「立切れ」を読む。
 1977年、同時受賞した、水上勉「寺泊」は、今月14日の記事にアップした。


 富岡多恵子は詩人として出発し、小説家へ転身した。思潮社「富岡多恵子詩集」(実質的全詩集、1973年・初版)の、1979年・6刷を僕は持っているが、彼女の詩はあまり読んでいない。小説は初めてである。
 「立切れ」は、今は表に出ない噺家、菊蔵の晩年(72、3歳)の、1時期を描く。
 菊蔵は物好きな学生グループに誘われ、風呂屋の脱衣所に客を集めて、廓噺ばかりを語る会を持つ。話題になり、物好きな週刊誌の取材を幾つか受けた。しかし1年で学生グループが、最後にすると告げる。
 噂で三味線方のお糸さんがアパートにあらわれて、出囃子を弾くと言う。菊蔵は廓ものの「立切れ」を演じ、三味線方を演じたお糸さんの誘いも断って、アパートの一人暮らしに帰る。公立の老人センターへ日曜ごとに通うようになり、無料の演芸会の客になる、という結末が救いだろうか。
 富岡多恵子のこの文体も、菊蔵の噺のように、枯れかかった艶がある。枯淡の境地を目指すのだろうか。
 僕の詩(ソネット群)は、枯淡ではなく、芭蕉の最後の境地、軽みを目指したい。
2 (2)
写真ACより、「ガーデニング」のイラスト1枚。




このエントリーをはてなブックマークに追加

 最近に手許に届いた2冊を紹介する。
 今月4日の記事で、釈迢空の全詩集Kindle Unlimited版のダウンロードを報せた。

 その際、彼の全歌集をほしいと書いた。それがAmazonで検索すると、角川ソフィア文庫にあった。
釈迢空全歌集 (角川ソフィア文庫)
折口 信夫
KADOKAWA/角川学芸出版
2016-06-18

 ただし税別:1,640円とかなり高価である。メルカリで古本が出ていないか調べると、古本はないが、新刊書・部門のメルカリブックスで出ている。メルカリはdポイントが使え、僕の分の期間限定ポイントが残っていたので、ポイントで買った。
 未読の歌集「遠やまひこ」を含む。「山の端」はないが、未刊歌集に含まれるのかも知れない。


 実はボタンで唯一の斑入り品種「島錦」の苗を買ったのである。楽天のある店で、接ぎ木2年生・苗:2,400円、送料:880円、合計:3,280円のところ、楽天ポイントを使って、1,111円のクレジット払いで済んだ。苗はもう10号鉢に植え付けた。莟が1つある。
 解説書が1,045円と割高だが、株は大きくなるかも知れないし、ボタンを買い増すかもしれない。毎月の世話が書いてあるのは、わかりやすい。
1 (6)

写真ACより、「ガーデニング」のイラスト1枚。



このエントリーをはてなブックマークに追加

 最近にAmazonのKindleストアより、4冊のKindle本をタブレットにダウンロードしたので、紹介する。

釈迢空全詩集
釈迢空
やまとうたeブックス
2017-03-16



 やまとうたeブックス・刊の「釈迢空全詩集」Kindle Unlimited版が出ていたので、ダウンロードした。釈迢空(しゃく・ちょうくう、折口信夫、1887年~1953年)の著作権が切れたので、Kindleストアには安価なKindle版全集や、この本が出ている。
 僕は日本文学全集の釈迢空集で、詩集「古代感愛集」「近代悲傷集」「現代襤褸集」の3冊を既に読んでいるので、補遺の詩作品のみが未読である。歌集は後期の「遠やまひこ」「山の端」を読んでいないので、全歌集を廉価に入手したいものだ。




 僕はKDP本を発行し、これからも続けて行くつもりである。ただしそれで大儲けしようとは思わない。しかし無料キャンペーン中であろうと、もっと読者が付いてくれないと、発行した意義がない。それでこのようなガイド本を読むのである。以前にも、優れたアドバイスを得た本がある。

家庭サスペンスvol.23 特集:毒身内
佐嶋しおり
笠倉出版社
2020-01-22

 マンガ誌「家庭サスペンス」vol.23(特集「毒身内」)が、Kindle Unlimited版になっていたので、ダウンロードした。ブログの先輩・暁龍さんのマンガ「可哀想な姉」が載るからである。



 

このエントリーをはてなブックマークに追加

 筑摩書房の「ウンガレッティ全詩集」(河島英昭・訳、1988年・刊)より、詩集「散逸詩篇」を読み了える。
 先行する詩集「最後の日々」は、先の11月27日日の記事にアップした。




ウンガレッティ全詩集
 全詩集の函の表を再掲する。

 「散逸詩篇」は、1915年~1927年までに書かれながら、当時(1945年)までに詩集未収録の詩編を、デ・ロベルティスが纏め解説・異稿を付して、モンダドーリ社から刊行された。イタリアで最初の詩を発表してから、従軍、除隊、公務に就き、結婚、37歳に至るまでの小詩集(全詩集で25ページ)である。

 出身地・エジプトや若年時代の回想、レトリックを用い始めた習作詩編などである。年代と執筆場所を付記した詩も多い。

 このあと22ページに渉って晩年の詩論「詩の必要」が収められるが、自己弁護を出ないようなので、精読をしない。この後は訳注・年譜・解説である。これで全詩集1冊の仕舞いとしたい。


このエントリーをはてなブックマークに追加

 筑摩書房の「ウンガレッティ全詩集」(河島英昭・訳、1988年・刊)より、詩集「最後の日々」(1919年)(フランス語詩篇)を読み了える。
 先行する「老人の手帳」の記事は、今月16日にアップした。


 「老人の手帳」は、年代順に最後の詩集であり、その後も亡くなるまで散発的に詩を発表したが、この全詩集には訳出されていない。

 「最後の日々」は初期フランス語詩集であり、フランスに留学(彼はエジプトから来たイタリア人である)後、1915年、第1次大戦に従軍し、塹壕の中で詩を書いた。
 「ギョーム・アポリネールに」以下数編では、青年詩人らしい感傷、ロマンチシズム、哀愁が読み取れる。「夏の夜」には、「花瓶と岩石とが砕けて火矢と火口に群れ飛ぶ/この暴虐に…」と戦闘を歌う。
 「黒の成就」は、シュールレアリスムの詩人、アンドレ・ブルトンに捧げられた。連作「ロマン・シネマ」6編は、エジプト時代の同級生で、パリの大学に共に通った親友、モハメッド・シェアブの自死を深く嘆いた作品である。
 このあとには「散逸詩篇」と、詩論「詩の必要」を収め、訳注・年譜・解説を付す。

4 (5)
写真ACより、「秋の人物コレクション」のイラスト1枚。


このエントリーをはてなブックマークに追加

山之口獏全詩集
 Kindle本「山之口貘全詩集 小説・評論・随想 14篇併録」より、散文14編を読み了える。
 全詩集の紹介は、今月14日の記事にアップした。



 詩人の文章として、どれが小説やらエッセイやら分からない。
 「つまり詩は亡びる」と「詩とはなにか」が評論であることは分かる。しかし論理的な定言には至らない。
 エッセイでは、沖縄県出身であることや、るんぺん(自分でそう書いている)までしながら、詩の創作意欲を失わなかったことが強調される。沖縄県出身の卑下や居直り、るんぺん生活からの名誉など、詩一筋のせいの明るさがある。
 「自伝」「私の青年時代」他、はっきり自伝の文章もある。全詩集と相俟って、極貧にあって詩を捨てなかったのは立派である。僕は進学で、文学を諦めた時期がある。再開したのは、結婚して1児を得てからだった。ずいぶん出遅れてしまった。タラレバはない話だけれども。


このエントリーをはてなブックマークに追加

 KIndle版「山之口貘全詩集 14篇併録」より、全詩集を読み了える。
 入手は、先の10月19日の記事にアップした。



山之口獏全詩集
 沖縄県出身の山之口貘(1903年~1963年)は、生涯に197編の詩を書いた。
 上京したが貧しく、借金を重ね、公園に寝泊まりしたり、汲み取り屋をしたりした。
 職業安定所に勤め、安定した時期もあった。
 貧困や欲求を描いたが、素直で1種の明るさがある。全詩集、選集、アンソロジー入集など数多い。
 思潮社より1975年~76年、4巻の全集が刊行された。また山之口貘賞が創設され、現在に至っている。





このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ