風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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到着

 所属する結社歌誌「覇王樹」の、2011年8月号をほぼ読み了える。
 到着は、先の7月30日の記事、届いた2冊を紹介する(24)にアップした。

 同・7月号の感想へ、リンクを貼ってある。

 結社のホームページ「短歌の会 覇王樹」は、既に8月号の仕様である。


 また僕の「逆転の」6首は、もう1つのブログ「新サスケと短歌と詩」の、7月30日の記事より、、2回に分載した。横書きながら、ご覧ください。


 通常の短歌作品、散文の他、今月号には「覇王樹賞」(新作20首)の発表がある。受賞は、財前順士「時空に花笑む」と、高間照子「ひとりごと」、2編だった。次席、候補作、選評を含め、8ページに渉る。また年間の1首「花薔薇賞」は、小笠原朝子さんの1首が受賞した。慶事なので、姓名を挙げた。
 T・次郎さんの「イチョウ葉」7首が、「短歌研究」5月号より転載された。また佐田公子代表の「残んの椿」10首が、「うた新聞」4月号より転載された。
 受贈歌誌抄3誌、受贈歌集紹介が2ページ6冊と、常ながら手厚い。

 以下に強く共感した2首を挙げる。
それぞれの内なる闇を広げつつ競い伸びゆく薮の若竹(K・恵美)
鯛焼は子等四人の楽しみに笑顔みたさに買い求めし日々(O・雅子)

03 (7)
 イラストACより、「自然」の1枚。





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 所属する結社歌誌「覇王樹」2021年6月号を、ほぼ読み了える。
 到着は先の5月29日の記事にアップした。

 リンクには、同・5月号の感想、僕の掲載歌6首、結社のホームページ「短歌の会 覇王樹」、3つへリンクを貼ってある。

「覇王樹」6月号
 コロナ禍に慣れたか、リモートワークに慣れ、家族の団欒が増えたり、マスク着用の顔に親しみを感じたりする。この平穏は、嵐の前の静けさではないだろうか。東京オリンピック期間のあと日本がどうなるか、世界の趨勢がポピュリズムよりどう変わるか、見通せない。
 散文のH・俊明さんの「覇王樹人の歌碑(54)」、W・茂子さんのエッセイ「落とし文考(77)」、S・素子さんの評論「後水尾院時代の和歌(79)」も順調である。
 受贈歌誌抄3冊を紹介、受贈歌集紹介・6冊2ページ、先々月号の歌の批評・4つ4ページと、内外に手厚い。
 注目する同人の一人に、Y・美加代さんがいる。今月号に「宛先はペガサスにしようカサブランカの匂うカード あなたへの」他を載せる。ずいぶん奔放だが、覇王樹の掲げる、平明・自由に、合うのだろう。
 もう1首、付箋を貼ったのは、M・久子さんの「私の有休」10首より、次の1首。「先輩に三十年目に出会いたり話せば彼女あの頃のまま」。社会や自然さえ変わる世に、人情は永く変わらない、と思う。




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 思潮社の現代詩文庫181「続続・辻征夫詩集」を読み始める。
 到着は今年3月20日の記事、「届いた3冊を紹介する(11)」で報せた。


 また先行する「続・辻征夫詩集」のしまいの記事は、先の5月28日にアップした。



 「続続・辻征夫詩集」は、2006年・刊。辻征夫の没した2000年より、6年後である。2003年には、書肆山田より「辻征夫詩集成」が刊行されており、それに対抗するためにも、また現代詩文庫で締めるためにも、「続続・同」は必要だったのだろう。
 「続続・同」の冒頭は、これまで現代詩文庫の抄出で、除かれていた作品である。当時の編集者には考えがあったのだろうし、詩人も納得していたのだろう。それが没後、全詩集に対抗するためにも、拾い上げるのは忸怩たる思いがあっただろう。ばらばらではあるけれど、現代詩文庫3冊で、散文を1部含め、全集をまとめた事は、晴れがましいだろう。

 「続続・同」の冒頭は、現代詩文庫で5詩集から漏れた作品を集める。
 「天使・蝶・白い雲などいくつかの瞑想」からでは、「むらさきの蝶」で「酒に依存し  酒に夢を/つむぎながら」と告白する。
 詩集「かぜのひきかた」の「アルバムの余白に」では、「ぼく 依然として/六年B組の/あの/ぼくです」と締める。大学を卒業するに至っても転向せず、少年少女のまま、成年とならない人が僅かにいると聞く。辻征夫も、稀なその1人なののだろう。「続・同」の詩集「鶯」より表題作「鶯」に現れる10歳に成ろうかという女の子は、敗戦革命を乗り越えられず、成年とならなかった女性(あるいは詩人)の内心のようだ。
 詩集「ボートを漕ぐおばさんの肖像」からでは、詩人の胸に住む優しいおばさんを巡って、縷々と語る。「ぼくにはまだ会ったことのない/不思議なおばさんがいて/いつもぼくの脳細胞の暗闇で/優しく呟いてくれるのだが」。

ホワイトサウンド
「ゆりの里公園」から、「ホワイトサウンド」の1枚。




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 本阿弥書店の総合歌誌「歌壇」2021年6月号を、ほぼ読み了えた。
 到着は、先の5月17日の記事にアップした。

 リンクより、旧号の感想へ遡り得る。

「歌壇」6月号
 2021年6月1日・付け・刊。169ページ。

 巻頭作品20首詠は、穏やかである。吉川宏志「組織図」で、自分の退職を描いている。もっとも何人を馘首して来たか、と思う。
 小島ゆかり「合鍵」では、改憲が消え、ワクチン接種の始まりによるコロナ禍の収束が見えてか、長閑である。次に1首を引く。
夫は長女をわたしは次女をひいきしてあほらし朝の会話も老いぬ
 夫のアメリカでの挑戦と挫折を仄聞した者には、感慨深い。
 特集の「短歌の中の光と闇」は、宗教めくかと読まなかった。編集部が新しく見つけたテーマだろうけれど。

 特別企画「短歌における話し言葉の効果」は、口語・現代文法の短歌を詠む者として、貴重だった。「サラダ記念日」以降、多くのトップ歌人が口語を取り入れ、ニューウェーブも現れ、口語短歌は認められてきた。擬古典短歌を詠んでいる場合ではない。
 連載「平成に逝きし歌びとたち(18)」は、河野裕子を取り上げている。講壇での髪豊かなカラー写真と共に、30首選が、作品集などで知る歌が多く、懐かしかった。版権の問題だろうか、早い全歌集の刊行が待たれる。

 作品7首より1首を引く。T・公作さんの「Bの鉛筆」より。
この辺が引き際だろう丁寧に頭を下げてゆるキャラが去る
 ゆるキャラブームもいつか去って、引き際の潔さを詠んだ。



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 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社)第3巻より、1回めの紹介をする。
 先行する「同 2」を読む(7)は、今月7日の記事にアップした。




ポオ全集第3巻
 「ポオ全集」第3巻の函の表である。1969年第1刷、1978年第5刷。

 第1編は、「ハンス・プファアルの無比の冒険」である。オランダで困窮したハンス・プファアルが気球を造り、工夫を凝らして月世界に至るという話である。長文の手紙が月の住人によって届けられ、真相がわかる。
 気球程のもので、月に至れない事は、現代の科学で明らかである。月到着の願いは古くからあり、色々な物語を生んだとしても、これは上手な部類ではないだろう。

 第2編は、「メエルストルムの渦」である。「大渦に呑まれて」「大渦の底へ」の訳題でも有名な短編である。大渦に巻き込まれた小漁船で、主人公が、大きいものや丸い物が早く沈む事を発見し、樽に身を縛って飛び込む事で、死を免れる。しかし樽に身を縛っては、海水も飲むだろうし、現実的なストーリーに思えない。前作と共に、当時の科学の知識が先行し、今の読者の感興が大きくない。



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 県内と東京都の1人の詩人を同人とする詩誌、「果実」82号を読み了える。
 到着は、今月9日の記事、同人詩誌2種が届く、で報せた。リンクより、過去記事へ遡れる。



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 9名19編の詩、5名5編の随筆を収める。作品によってランダムに掲載する試みを行ったが、詩人ごとにまとめて何編か掲載する編集に戻った。
 W・本爾さんの「年賀状」は、子~亥の12の干支を追って書かれた。数え歌的な詩を僕は好まないが、真実を衝いた節がある。
 N・昌弘さんの「世代」は、老母を描いて、「…世間の物音は敏感に/…社会の本当は見えるらしい」とその賢さを讃えるが、末行の「ああ おそろしや おそろしや」は余分ではないか。
 K・八重さんの「口紅」は、母の香港土産にもらった、残り物のオレンジの口紅が似合うようになったと、年月の深さを思わせる。
 T・篤朗さんの3編は、生きるとは、いかに生きるか、を問うて真剣である。
 K・不二夫さんの「ドコカガチガウ」は、山中の散策に若かった時との違いを感じ、自分と社会の変遷の故かと、「ちがう ドコカガチガウ」と悲傷する。





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 僕の属する同人詩誌「青魚」No.92を読み了える。
 到着は、今月9日の記事、同人詩誌2種が届く、で報せた。リンクより、関連過去記事へ遡れる。



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 「青魚」はB5判、目次より後書まで含めて、37ページ。2段。
 僕はソネット「ブロック」、「クーデターか亡命か」、「ボケの自覚」、「古書店興亡」4編を寄せた。ネットで公開する時もあるだろう。

 冒頭はY・英一さんの追悼文「ハインライン氏の訃報を知って」2ページである。アメリカの旧友の死を嘆いた。
 T・幸男さんは4編を寄せるが、内2編は既刊詩集からの再掲である。僕と同じく、詩想が溢れないらしい。
 新参加のS・沈潜さんは戯話めいて深刻な「アイコ」を寄せた。代表、T・晃弘さんと同じく、老年大学に学んでいるA・信子さん、H・喜代子さん、K・文子さん、T・育夫さんも家族を描くなど、元気である。
 T・晃弘さんの追悼文「詩友、鎌数学を悼む」は、「青魚」創刊同人の鎌数学さん(寺の住職だった)の死を悼んでいる。


 A・雨子さんの長い散文の連載は、今回は「慶太郎さん」11ページである。家族親族・同級生らを回顧して、当人には手応えがあるのだろう。
 詩の困難な時代に各人、向かう態勢が少しずつ違ってきたようだ。



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