二十三夜
 先日、AmazonのKindle本を見ていると、萩原朔太郎「二十三夜」が0円で出ていた。
 聞いたことがない題名であり、評論集やアフォリズム集なら嫌だな、と思いつつ、0円に惹かれてタブレットにダウンロードした。
 開いてみると、数ページ(字の大小で変わる)の掌編小説だった。
 Kindle本の小説は、今年3月11日の記事、堀江貴文「拝金」以来である。
 詩人の小説は、言葉に凝り過ぎていけない、とされるが、短くもあり朔太郎自身の影もあるので、面白く読んだ。
 筋は、縁日でヤクザ崩れが紳士に絡み、喧嘩だと多くの衆人が集まる話である。力ずくになろうとする所を、紳士の連れの和装娘が止め、紳士は消え去る。追うヤクザ崩れ・芳公は、思いがけず見物衆の反感を買っていて、逆に殴られる。紳士の連れの娘は、芳公とも見知りらしく、身を挺して止める。
  気弱で薄情な紳士(自身の影があるようだ)と、威勢のいい芳公と、気の張った娘と、一幕を成す。
 でも詩人の小説は、読みたくない。詩から小説へ移った作家は多く、詩人と小説家を兼ねた三木卓、清岡卓行もいたけれども。