風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

吉田篤弘

 吉田篤弘の月舟町三部作より、完結編の「レインコートを着た犬」を読み了える。
レインコートを着た犬 (中公文庫)
吉田 篤弘
中央公論新社
2018-05-22


 第1作の「つむじ風食堂の夜」は、今月22日の記事にアップした。

 リンクより、初めに読んだ第2作「それからはスープのことばかり考えて暮らした」の感想へ、遡れる。
 「レインコートを着た犬」は、映画館主の青年・直さんに飼われる犬(人語、人情を解する)ジャンゴの目から視た、直さん、映画館でパン屋を営む初美さん、コンビニに勤めるタモツさん、古本屋のデ・ニーロ親方、その妻で屋台の飲み屋をしているサキさん、つむじ風食堂のサエコさん、果物屋の青年兄弟たちの物語である。漱石の「吾輩は猫である」のようだ。
 サキさんが屋台を止められない理由を、「ただ、わたしのこの屋台はね、云ってみれば、世の中のどんづまりにある最後の楽園みたいなものだから」と述べて、家庭にも居場所のないサラリーマンを思わせる。ジャンゴは、「世間知らずという言葉が示す「世間」というものは、、そうした純真なものをひねりつぶすのが得意である」と思う。また「愚かしいことは時に可愛い。可愛いことは、おおむね愚かしい」とも。
 うらぶれた住人たちだが、直さんがギターの名手である(今は封印している)ことが明かされ、降雨を研究している先生は問題解決の糸口を掴み、住人それぞれが新しい出発をするのかと、僕は思った。「リベンジ」という言葉(復讐ではなく、再挑戦という意味で)が好きである。しかし物語では、それぞれが営みをほとんど変えない。映画館の「いつまでも終わらない最後の上映」が話題になり、皆の集合写真を撮る場面で仕舞いとなる。記念写真を撮るようでは、散会の前のようで危うい。
 敗北の美学、敗者の美学、というものを僕は認めたくない。人気作家の作品であることも気に障る。



01 (4)
写真ACより、鉢植えのイラスト1枚。
このエントリーをはてなブックマークに追加

 吉田篤弘・月舟町三部作より、第1作「つむじ風食堂の夜」を読み了える。
 入手は今月15日の記事、入手した5冊を紹介する(7)で報せた。


 リンクより、連作第2作の「それからはスープのことばかり考えて暮らした」の感想へ、遡れる。

つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)
吉田 篤弘
筑摩書房
2005-11-01



 月舟町の食堂(店主はフランスで修行した事があるが、今は安食堂を営んでいる)、つむじ風食堂(元は名無しだが、客が自然にそう呼ぶようになった)の常連客、先生と呼ばれる私(降雨の研究を目指すが、今は売文に追われている)、帽子屋の桜田さん、果物屋の青年、古本屋の親方、売れない女優・奈々津たちの物語である。侘しい街の住人ながら、サラリーマンは一人も現れない。
 善良な人々だが、悪意ある人々に追いやられたような、生活を送っている。私は昔、戯曲を書いた事があるから、女優・奈々津に台本を書くよう頼まれ、「ね?わたしを助けてやってください。女優・奈々津を女にしてください」とまで言わせながら、煮えきらない程である。
 ノスタルジックな、ファンタジーめいた小説である。村上春樹もファンタジックな小説を描くけれども、彼には社会性があり、悪への反撃を含む。読み了えて、ああ良い小説だったなあ、で済んでしまっては、読み捨てられる可能性が大である。



01 (2)
 写真ACより、鉢植えのイラスト1枚。
このエントリーをはてなブックマークに追加

 最近に入手した5冊を紹介する。
 今月8日の記事、吉田篤弘「それからはスープのことばかり考えて暮らした」を読む、にアップしたように、読後感が心地よかったので、月舟町三部作の残り2編を買った。


つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)
吉田 篤弘
筑摩書房
2005-11-01

 実物は帯を巻かれているので、そんなに黒が目立たない。
 ちくま文庫、2010年1月、16刷。メルカリで中古本を、300ポイントで。

レインコートを着た犬 (中公文庫)
吉田 篤弘
中央公論新社
2018-05-22

 中公文庫、2018年5月。刊。メルカリの新刊部門:メルカリブックスより、新品を726ポイントで。


 笠倉出版社、家庭サスペンスvol.29、特集・この女が許せない。7名の7編のマンガである。
 Kindle Unlimitedで出ていたので、ストレス解消になるかと思って。


 この1を読んだ覚えがあるので、Kindle Unlimitedよりダウンロードした。

焼き鳥 (小説)
植原 剛
2021-03-24

 400字詰め原稿用紙20枚分の短編小説。インディーズ(独立系作家)の短編として、Kindle Unlimited版を。僕もKDPで、詩集、歌集、小説、文集をだしているので、応援とレベルを見るために。



4 (2)
写真ACより、「雨の日」のイラスト1枚。



このエントリーをはてなブックマークに追加

 昨日(7月7日)の記事で到着を報せたばかりだが、吉田篤弘の小説「それからはスープのことばかり考えて暮らした」を読み了える。





 中公文庫、2019年5月30日・17刷。著者・吉田篤弘は、クラフト・エヴィング商會の名義での著作・装幀の他、小説を多数発表している。彗星のように現れたクラフト・エヴィング商會は話題になったが、その個人が吉田篤弘と知らず、初めての作家さんである。
 失職中の大里青年(オーリィ)と、サンドイッチ屋「トロワ」の主人・安藤、その息子・律(リツ)、大家の大屋(マダム)、オーリィ青年が憧れる昔の映画の端役・松原あおいの、現在のおばあちゃん、が登場人物である。青年はサンドイッチ屋で働くようになり、スープ役を任せられる。あおいとオーリィが映画館で出会うようになって(あおいも自分の出演映画の上映を追っていた)、知り合い、あおいの絶品のスープの作り方を伝授された所でエンドとなる。娘さんは一人も登場せず、老壮の男女は配偶者を亡くしている。それでも暖かい物語で、ハッピィ・エンドである。
 作者は本作と、「つむじ風食堂の夜」「レインコートを着た犬」を、月舟町三部作と呼んでおり、読みたい気持ちになる。


3 (2)
写真ACより、「雨の日」のイラスト1枚。


このエントリーをはてなブックマークに追加

 最近に手許へ届いた3冊を紹介する。
 まず短歌結社「コスモス」内の若手歌人による、季刊同人歌誌「COCOON」のIssue20である。
 同・Issue19の感想は、今年5月10日の記事にアップした。


COCOON Issue20
 同・Issue20は、2021年6月15日・刊。121ページ。定価:500円(税・送料・込み)。
 32首詠4名他、12首詠、評論、エッセイ、歌にイラストを合わせた作品、歌合など、多彩である。

 
 これまでに彼女の「これは経費で落ちません!」シリーズを読んで来て、最新8巻の感想は、先の6月10日の記事にアップした。

 このシリーズ以外の、彼女の作品を読みたくなったからである。彼女のブログ「まわり道の回想」(ブックマークに入っている)より知った。
 「コーチ!」は、講談社文庫、299ページ、2021年3月12日・刊。定価:660円。

 3冊めは、吉田篤弘の小説「それからはスープのことばかり考えて暮らした」である。

 誰かは忘れたけれども、あるブログでとても誉められていたからである。
 中公文庫、2019年5月・17刷、287ページ。定価:629円+税。
 上記2冊の文庫本は、メルカリより入手した。作者には申し訳ないが、便利な世の中である。



このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ