風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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名作

 このブログの今月9日の記事に、「川端康成文学賞 全作品 Ⅰ」より、第1回の上林曉「ブロンズの首」をアップした。

 その時に書いた、筑摩書房「増補 決定版 現代日本文学全集 補巻8 上林曉集」を読む事にして、パソコン机の傍らに置いて、初めより読み始めた。
上林曉集
 函がヤケて、字がやや小さいが、本文は読むに良好である。

 上林曉は、敗戦前から活躍した作家だが、この「風致区」は1946年発表である。
 作者は吉祥寺の駅に降りると、井の頭池を1周する習慣があるという。池を巡って何百本かあった杉の木が、戦争末期に伐り取られ、畑地になった事を悲しむ。戦争末期に亡くなった、作家・田畑君の告別式のあと、作者と文芸誌の婦人記者だった竹本さん、作家・教授の引田君が偶然落ち合って、世間話をして別れる。ゲーテ「ウェルテルの悩み」をわずかに読んで慰められ、結末となる。
 敗戦期の侘しい心情と、井の頭池周囲の侘しさ、病妻をもつ個人的な侘しさと重なり合って、敗戦後の1心境を表している。
 この本には、44編の短編小説を収める。根を詰められなくなった僕には、短編小説集が適っている。
 「ブロンズの首」の記事にもう1つ書いた、集英社の「日本文学全集 52 上林曉 木山捷平集」には、上林曉の出世作「薔薇盗人」や、名作とされる「聖ヨハネ病院にて」も収められているので楽しみである。



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 沖積舎「梅崎春生全集」第3巻より、5回めの紹介をする。
 同(4)は、先の6月7日の記事にアップした。リンクより、過去記事へ遡れる。

 今回は、「拐帯者」、「春日尾行」、「雀荘」、「クマゼミとタマゴ」、「大王猫の病気」、「ボロ家の春秋」、6編を読んだ。
「拐帯者」
 同(3)の記事にアップした、「拾う」と似たテーマで、突然、大金を手にした男(この場合は会社のお金を持ち逃げしようとしている)が、1晩の遊蕩とアバンチュールに、満足しない。このテーマに、梅崎春生がなぜ拘ったか、わからない。
「春日尾行」

 ミステリーめいた進行で、最後に大団円で決着が付く。推理小説の流行があったのだろうか。
「雀荘」
 ジャン荘ではなく、「スズメ荘」の名のアパート6室(仕切りが3分の1しかない)の住人が、戦後のあぶれ者ばかりで、駆け引きをしながら生活している。
「クマゼミとタマゴ」
 全集で実質2ページの掌編で、同(2)で紹介した「ヒョウタン」と同じく、少年時の回想風の作品である。
「大王猫の病気」
 行き詰まりを宮沢賢治の口語体に救われた(椎名麟三「解説」より)という梅崎春生が、童話を試みた1編である。部下の猫たちに、戦時下の上下関係も見える。童話としては優れていない。
「ボロ家の春秋」
 直木賞を受賞した、名作とされる。
 権利金を騙し取られた「僕」と「野呂」の下宿人が、夜逃げした所有者より家を差し押さえた陳さんに家賃を払う羽目になる。2人は陳さんより、家を買い取り、お互いが家を単独で所有しようと画策する。

 これら近親憎悪は、従軍して生き残った者の、お互いの後ろめたさから来ているようだ。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。


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