風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

小説

 青木祐子の小説「コーチ!」を読み了える。副題は「はげまし屋・立花ことりのクライアントファイル」である。到着は今月7日の記事、届いた3冊を紹介する(14)にアップした。

 これでその3冊を読み了えた事になる。
 リンクより、彼女の「これは経費で落ちません!」シリーズの感想へ遡れる。



 「コーチ!」は、講談社文庫、2021年3月・刊。
 彼女もブログ「まわり道の回想」で、「迷いながら書いた」とある通り、すっきりした小説でなかった。
 依頼者は、派遣社員から転職を考える24歳女性、小説家志望の33歳独身女性、ネットビジネスでの成功を狙う36歳男性、などがオンラインはげまし屋の、ことりのクライアントになる。それぞれ成功へ前向きになる所で、1話がおわる。決して成功の場面に至らなく、サクセスストーリーともファンタジーとも呼べない。
 生きて行くには、営業のはげまし屋など無用だと考える。各人の処世術(粘り、忍耐、慎重さ、メモの習慣、嫌な人には面従腹背、耐えられない日は休む)を覚え、幸運(僕の場合は、短歌との出会い、近親者の援助)を掴み、一人一人が苦境から脱出して行くしかない。悪党もいるが、必ず挫折失敗した。人の助けなしに、成功は続かないからである。僕はヒラの現場職員として、63歳まで働いたが、自分と家族のために、そうするよりなかった。リタイア後は、悠々とではないが、自適の生活を送っている。
 虚構の小説と納得しているから、青木祐子にも腰を据えた、きりの良い小説を書いてほしい。



ネール蓮
 「花はす公園」より、「ネール蓮」の1枚。

 



このエントリーをはてなブックマークに追加

 昨日(7月7日)の記事で到着を報せたばかりだが、吉田篤弘の小説「それからはスープのことばかり考えて暮らした」を読み了える。





 中公文庫、2019年5月30日・17刷。著者・吉田篤弘は、クラフト・エヴィング商會の名義での著作・装幀の他、小説を多数発表している。彗星のように現れたクラフト・エヴィング商會は話題になったが、その個人が吉田篤弘と知らず、初めての作家さんである。
 失職中の大里青年(オーリィ)と、サンドイッチ屋「トロワ」の主人・安藤、その息子・律(リツ)、大家の大屋(マダム)、オーリィ青年が憧れる昔の映画の端役・松原あおいの、現在のおばあちゃん、が登場人物である。青年はサンドイッチ屋で働くようになり、スープ役を任せられる。あおいとオーリィが映画館で出会うようになって(あおいも自分の出演映画の上映を追っていた)、知り合い、あおいの絶品のスープの作り方を伝授された所でエンドとなる。娘さんは一人も登場せず、老壮の男女は配偶者を亡くしている。それでも暖かい物語で、ハッピィ・エンドである。
 作者は本作と、「つむじ風食堂の夜」「レインコートを着た犬」を、月舟町三部作と呼んでおり、読みたい気持ちになる。


3 (2)
写真ACより、「雨の日」のイラスト1枚。


このエントリーをはてなブックマークに追加

 今日2回めの記事更新です
 既発行の柴田哲夫(新サスケのペンネーム)のKindle本、少年詩集「鳶の歌」と小説「底流」の定価を、500円から250円に値下げしました。

少年詩集 鳶の歌
柴田哲夫
2020-09-03



底流
柴田哲夫
2020-02-19


 理由は、第1歌集のKindle本「雉子の来る庭」を250円で発行した事と、文集「妻の直腸がん闘病記」を99円で発行して好評な事です。安値で好評なのではなく、内容に依るかとも思います。
 アマチュア文学界には、贈呈文化があり、無料で読者に贈呈してきました。それではすべて、最低価格の99円で発行すれば良いかといえば、執筆、KDPアップ、修正の苦労を思えば、それもできません。文集は、ブログ記事をコピペして編集したので、低価格の発行を決めました。
 無料キャンペーンはもう行わない方針ですので、定価のKindle本か、追加金無料のKindle Unlimitedでお買い求めください。詩集「日々のソネット」「改訂版 光る波」は、管理権が代行出版社にあるので、容易に条件変更をできません。
 まだ完全には理解できていませんが、KDP出版の方法を重ねたので、これからもKDPを続けたく、よろしくお願い致します。


1 (9)
写真ACより、「雨の日」のイラスト1枚。


このエントリーをはてなブックマークに追加

 大崎善生の小説「パイロットフィッシュ」を読み了える。
 購入は先の2月27日の記事、届いた5冊を紹介する(3)にアップした。


 大崎善生の小説の、直近の感想は、先の2月13日の記事にアップした。


パイロットフィッシュ (角川文庫)
大崎 善生
KADOKAWA
2012-10-01

 先の「ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶」を、ブログで酷評したところ、ブロ友さんより、この本を読んで感動したと、勧められたのだった。
 2006年9版、247ページ。
 僕こと山崎が、地理オンチのままアルバイト応募先を探しあぐねて入った喫茶店に、一人で泣いている娘さんがいて声をかけ、3ヶ月後に落ち込みの果て電話をかけ、再会をする。由希子は、山崎隆二の就職先、文人出版(編集長・沢井速雄)を見つけてくれるが、エロ雑誌「月刊エレクト」が主な出版だった。それでも山崎は19年勤め続ける。
 高校・大学時代からの友人・森本は、大手の会社の営業マンとなりながら、アルコール依存症となり入院する。由希子の友人・伊都子と性関係を持った(伊都子は友人の彼氏と関係を持つ習癖がある)事で、しばらくで二人は別れてしまう。現在、沢井・編集長は亡くなり、山崎には七海という恋人がいる。19年ぶりに、1女の母となった由希子と僕・山崎は再会するが、ビアホールに入り、そのあとプリクラを撮って別れる。由希子の夫の不倫相手は伊都子である。
 題名のパイロットフィッシュは、高級な熱帯魚を飼う前、水槽のバクテリア状態を良くするためのみの用途で飼われる初心者向けの熱帯魚を指す。この小説では、僕が学生アルバイトをしたロック喫茶のマスター一家が、山崎と由希子を親しく歓待し続けてくれたけれども、大韓航空機事件に遭って亡くなった事を指すらしい。
 僕が長々とストーリーを書いたのは、1節ごとくらいに時制が激しく行き来するので、時制を一本に直して理解するために、必要だからである。
 この小説のテーマを表す初めの2行は、以下の通りである。「人は、一度巡り合った人と二度と別れることはできない。なぜなら人間には記憶という能力があり、そして否が応にも記憶とともに現在を生きているからである。」
ヒヤシンスa
写真ACより、「ヒヤシンス」のイラスト1枚。



このエントリーをはてなブックマークに追加

 県内を中心とした詩誌「水脈」の、69号を読む。
 贈呈の到着は、今月25日の記事、届いた3冊を紹介する(10)にアップした。

 リンクには、同68号の感想へ、リンクを貼ってある。

IMG_20210124_0003
 詩では、N・としこさんの「掃く」に惹かれた。庭の落葉掃きの生活詩なのだけれど、4章は起承転結を成し、第3章では人生の感慨が述べられる。
 A・比佐恵さんの「栗を拾う」では、「…廃道の/どん詰まりに/三本の山栗の木がある」と始まって、一人の栗拾いが楽しげである。思いは広がってゆく。
 かつての代表の、I・信夫さんの名前がなく、心配である。

 毎号、小説を載せている、N・えりさんの特集(小説3編、同人の感想エッセイ9編)がある。僕は詩誌の小説が、正道と思えなく、読んで来なかった。
 またもう1つの特集に、「葵直喜さんを偲んで」6編がある。僕とは触れ合いが少なく、ほとんど読まなかった。「読み部」の自称がすたる、と反省した。



 

このエントリーをはてなブックマークに追加

 今日2回めの記事更新です。
 昨年末12月21日~26日に、僕のKindle本、詩集「鳶の歌」と小説「底流」の、クリスマス無料キャンペーンを催しました。

 その後、僕は入院し、退院しても家のネットが繋がらなく、結果がわかりませんでした。
 1月20日にネットが繋がり、キャンペーンの結果がわかりました。期間中の無料ダウンロードは、7冊でした。多くはありませんが、実力の所でしょう。
 これに引かれたのか、1月19日、Kindle Unlimitedの228KENPがあり、はっきりしませんが、3冊分くらいでしょうか。あるいは以前の詩集「日々のソネット」「改訂版 光る波」のダウンロードではなかろうかと、都合よく考えています。
 次のKindle本の歌集を出版すべく、既に歌稿より、自選を始めています。

0-10
写真ACより、「ウィンターアイコン」の1枚。


このエントリーをはてなブックマークに追加

 三浦哲郎の小説「夜の哀しみ」(新潮文庫、上下巻)を読み了える。
 三浦哲郎の本では、昨年6月5日の記事に、短編小説集「冬の雁」をアップしている。


IMG_20210123_0001IMG_20210123_0002
 初出は、日本経済新聞・1991年9月14日~1992年9月13日である。新聞小説に文学を呼び戻す意気込みで始められた。
 出稼ぎの夫を持つ35歳の登世が、親友の夫・聖次と不倫関係になり、家での密会を息子に見られ、(堕胎、別れ、結核らしい病気を経て)、息子と娘にたかられるようになり、息子との取っ組み合いの末、首を絞めて失神か死亡かわからないまま、海に入水自殺をする結末を迎える。
 2、3年前、1度読みかけて、止めた本である。ぼくは不倫もの、愛人ものが苦手だった。パール・バックの「大地」も、主人公が富んで、愛人を住まわせるようになった所で、読書が中断した。
 35歳で1年の空閨は、耐えがたいものがあったかも知れない。三浦哲郎は、愛情と共感をもって登世を描いている。これまでと異質な世界である。


このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ