風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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川上未映子

わたくし率 イン歯ー、または世界 (2)
 川上未映子の講談社文庫より、「わたくし率 イン 歯ー、または世界」、「感じる専門家 採用試験」を読み了える。
 同・本の入手は、今年4月29日の記事、(同)をローソン店で受け取るにアップした。
概要
 2編の初出など、リンク記事に書いたので、ご参照ください。
 川上未映子(かわかみ・みえこ、1976年・生)が、大阪の高校卒業後、弟の大学資金を稼ぐため、本屋のアルバイトとクラブのホステスをしながら、なぜ「早稲田文学」に伝手ができたのか、わからない。のちに上京して、歌手活動をしたから、優れた才能はどこかで見出だされ開花するのかも知れない。
「わたくし率 イン 歯ー、または世界」

 自分の本質は脳でなく、奥歯にあると信じる女性が、歯科助手に就職し、お腹の子や同僚に宛てて手紙を書く。子の父親の「青木」の部屋を久しぶりに訪うと、別の女がおり、放り出されてしまう。
 本質が奥歯にあると信じたのは、少女時代に苛めを受ける苦しさから考え出されたらしい。川端康成「雪国」の冒頭に主語がないテーマも、その時の自己抹消の方法からである。
 結局「青木」の部屋の玄関から追い出され、過去も妊娠もあやふやとなって結末する。
「感じる専門家 採用試験」
 前作よりも約半年、早く発表された。
 ずいぶん詩的な表現が多いことと、大阪弁の文体が、印象に残る。「徹底的な後悔も、徹底的であるなんて、あれはそれで美しかったね」の1語が刺さる。
 彼女は詩の才能があり、詩集で第14回・中原中也賞を受賞している。最近でも詩から小説に移って成功する、それも女性がいるんだ、と驚く。


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 最近に入手した、同人詩誌と短編小説集を紹介する。
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 まず僕が属する同人誌誌、「青魚」No.90である。
 同・No.89の感想は、昨年11月21日の記事にアップした。リンクより、過去号へ遡れる。

 同・No.90は、6月8日の文学講座のおり、千葉(兄)さんより、僕が発送の分を含めて、10冊を受け取った。
 B5判、1ページ2段組み、42ページ。
 2019年6月5日、鯖江詩の会・刊。
 僕は6編のソネットを寄せた。内容は、もう1つのブログ「新サスケと短歌と詩」の6月11日の記事、変換(2)より、毎日1編ずつ順次アップしてゆくので、横書きながら是非ご覧ください。

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 次に川上未映子の短編小説集「愛の夢とか」を、メルカリで買った。
 エッセイ本「きみは赤ちゃん」を除いて、彼女の小説は、昨年10月31日の記事、すべて真夜中の恋人たち以来である。リンクより、彼女の過去記事へ遡れる。
 彼女の小説にあまり期待していないのだが、メルカリで見つけると引きずられるように買ってしまう。進展があるかと、期待を持っているのだろうか。


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 川上未映子のエッセイ本「きみは赤ちゃん」を読み了える。
 メルカリからの購入は、先の4月28日の記事、歌誌と歌集とエッセイ本にアップした。リンクより、川上未映子の関連の記事を遡れる。
概要
 初出は、「出産編」が「本の話Web」2013年7月~11月・連載、「産後編」が書き下ろし。
 単行本は、2014年7月、文藝春秋・刊。
 文春文庫は、2017年5月10日・第1刷。
感想

 35歳になった女性作家が、妊活をして妊娠し、出産を経て、息子が1歳になるまでの育児も語られる。基本、望み通りで、ハッピィな語り口である。
 世の中には結婚しない人、結婚しても子供が出来ない夫婦、別れてしまう夫婦もいる。川上未映子は、再婚であるが故にか、乗り切って育児に至っている。
 妊娠を産婦人科で夫(作家、あべちゃんと書かれている)と確認した時の喜び、つわりの苦しみ、突然のつわりの解消、マタニティブルーの苛立ちも、率直にユーモアのある口語調で書かれている。
 そして無痛分娩の筈が、難産で帝王切開となるいきさつが描かれる。子が生まれての、号泣など、ここでも率直である。
 産後は母乳授乳を選んだので、2時間ごとの授乳等でほとんど眠れない日が続く。夫が睡眠、執筆を続けるので、産後クライシスにもなるが、2人は徹底的に話し合って、危機を回避する。
 自然に卒乳し、お気に入りのベビーカーで(それにも救われ)散歩し、息子の1歳の誕生日祝いの場面でおわる。初めての経験尽くしの妊娠、出産、育児を、ごくたいへんな事も、関西弁交じりの明るい文体で述べられて、幸せ感が伝わって来る。


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わたくし率 イン歯ー、または世界 (2)
 今日2回目の記事更新です。
 先日にメルカリへ360ポイントで注文した、川上未映子「わたくし率 イン 歯ー、または世界」を、今日(4月29日)午後、ローソン某店で受け取った。
 ローソンでの受け取りにも慣れて、昨日記事の川上未映子「きみは赤ちゃん」の受け取り伝票は店員さんに代行で出してもらったが、今回はほぼ自力で伝票を機械から引き出せた。
 この講談社文庫(2010年・刊、定価:381円+税)には、小説「わたくし率 イン歯ー、または世界」と、短編「感じる専門家 採用試験」を収める。
 「感じる専門家 採用試験」は初出が「早稲田文学」2006年11月号である。「わたくし率 イン 歯ー、または世界」の初出が「早稲田文学0」2007年5月30日・刊である。この小説が第137回・芥川賞・候補になり、第1回・早稲田大学坪内逍遥大賞・奨励賞を受賞して、作家としてデビューした。
 僕は川上未映子の熱心な読者ではないが、メルカリ・ポイントが少し溜まると、無駄な本を買いそうで、ある程度の好みの本を注文した。


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「覇王樹」5月号
 所属する結社の歌誌「覇王樹」2019年5月号が、4月26日に、ゆうメールで届いた。
 5月1日付け・刊。来年8月・刊の100周年記念号に向けて、原稿募集等が本格化した。
 先の歌誌「覇王樹」4月号を読むは、今月5日の記事にアップした。
 5月号の僕の歌6首(8首より選)他は、もう1つのブログ「新サスケと短歌と詩」の4月27日付け記事より、順次少しずつアップするので、横書きながらご覧ください。

あやはべる
 4月24日に、米川千嘉子・第7歌集「あやはべる」(迢空賞・受賞)が、Amazonのマーケットプレイスより、ゆうパケットで届いた。価格:2,090円(送料・税・込み)。短歌研究社、2013年3月・重版。
 今月22日の記事、同・第8歌集「吹雪の水族館」が届くに次ぐ。

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 川上未映子のエッセイ本「きみは赤ちゃん」(文春文庫、2017年5月・刊)を、メルカリより330ポイントで注文し、4月24日にローソン某店で受け取った。
 作家・川上未映子の妊娠・出産・子育てをめぐるエッセイ本である。
 彼女の本は、小説「すべて真夜中の恋人たち」を、昨年10月31日に記事アップして以来である。
 蔵書は読みきれない程あるのだが、最近の新しめの本もつい読みたくなり、買ってしまう。



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すべて真夜中の恋人たち

 川上未映子の長編小説「すべて真夜中の恋人たち」を読み了える。
 先の9月22日の記事
「届いた1個と1冊」で、メルカリよりの到着を報せた。
概要
 初出:「群像」2011年9月号。
 単行本:2011年10月、講談社・刊。
 講談社文庫:2016年8月、18刷。
感想
 読み了えて、正直、失望した。長い助走を経て、クライマックスが、主人公・入江冬子が恋人・三束さんの手をとって、愛を告白する所だった。約束した入江の誕生日に、三束は現われず、連絡が取れなくなる。三束よりの手紙で、彼が失職した者で、教師と経歴詐称していた事を詫びられる。
 男性、読者に媚びていない。そうして書くと、このような小説になるのか。読後、昔に読んだ堀辰雄「風立ちぬ」を思い出した。結核病棟に娘さんを見舞うだけの恋だったと記憶する。事実に近い部分もあったようだ。
 周囲の女性友人の、様々な生活も見聞として語られるが、ピント外れのようだ。夫婦とは、愛憎のドロドロから澄んでゆくものではないだろうか。個の本性には、エゴも思い遣りもある。


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 川上未映子の長編小説「ヘヴン」を読み了える。
 入手は先の9月21日の記事、
「頂いた本など9冊より(2)5冊」の、5冊目にアップした。
 9月18日の記事、「乳と卵」の感想に次ぐ。
概要
 講談社文庫。2017年・9刷。311ページ。
 初出は「群像」2009年8月号。単行本は、2009年9月、講談社・刊。
感想
 苛められる中学生「僕」と「コジマ」(女子生徒)の友情の物語である。苛める側の「二ノ宮」の凄惨さ、傍観者的に取り巻く知性派「百瀬」の無力さ、が描かれる。
 嬉しい時のドーパミン「うれぱみん」、悲しい時の「かなぱみん」、苦しい時の「くるぱみん」の造語が哀切である。
 「コジマ」は「苛められる」事をどんどん理論武装化し、遂には狂気に近くなる。「僕」は斜視の手術を受けて成功し、12月の木の葉の美しさを描いて巻末となる。「コジマ」はどうなるか。ある人は「人は一人一人、苦境から抜け出すしかないんだ。」と述べていた。夫婦の間は別として、と僕は思う。「コジマ」も機会を掴んで、苦境を脱け出るだろう。
 作家について。このように美しい純粋なストーリーを描ける娘さんが、今後どのようになるのだろうと不安を抱かせる。しかし、したたかに書き続けるだろう。


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