風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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感想

 最近に手許へ届いた2冊を紹介する。
 まず所属する結社歌誌「覇王樹」の、2021年8月号が届いた。
「覇王樹」8月号
 同・7月号の感想は、今月5日の記事にアップした。リンクより、旧号の感想へ遡れる。


 もう1冊は、今村夏子「父と私の桜尾通り商店街」がAmazonの、ほしい物リストに残っているのを見つけて、メルカリの古本を、わずかなメルペイ残高とクレジット決済で買った。
父と私の桜尾通り商店街
今村 夏子
KADOKAWA
2019-02-22

 題名に惹かれたのだが、同題の作品を含む、短編小説集らしい。
 2019年、「むらさきのスカートの女」で芥川賞を受賞する、直前の作品集である。
 「むらさきのスカートの女」の感想は、2019年10月31日の記事にアップした。

 リンクより、他の作品の感想へ遡れる。
 2010年にデビューして、現在まで6冊刊行と、彼女はどうも寡作らしい。








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 短歌結社「コスモス」内の若手歌人による季刊同人歌誌、「COCOON」Issue20をほぼ読み了える。
 到着は、今月7日の記事、届いた3冊を紹介する(14)にアップした。

 リンクより、旧号の感想へ遡れる。

COCOON Issue20
 感想として、皆が大人しくなったなあ、という印象がある。オリンピック以後という、嵐の前の静けさなのか。同人が大人になったのか。1965年以降生まれの仲間を同人としており、代表のO・達知さんは57歳になる。
 異端の(これは褒め言葉である)S・ちひろさんは、「約十年続いた過食嘔吐だがこの半年はぱたりと止まる」と、心理的にも身体的にも、安定したようだ。
 この大人しさが、短歌による自己救済であれば良いのだが。

 特集「この頃気になる歌/ずっと気になっていた歌」では、29名が2首ずつを上げ、気になる理由を短く(1人1ページ)述べている。若い歌人が関心を向ける短歌がわかる。その他、散文を含め、バラエティある構成である。
 121ページ、上質紙という、僕の所属する「覇王樹」よりも、ページ数多く、贅沢な造りである。月刊結社誌以外に、発表の場を持つのは好いことだ。人間関係に疲れるので、僕はある誘いに乗らず、ブログ「新サスケと短歌と詩」で(読者は少ないが)短歌の公開を続けている。

 「COCOON」では、若い歌人の入会もあり、隆盛なようである。古希過ぎのおじさんは、発展を見守ってゆきたい。





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 思潮社の現代詩文庫181「続続・辻征夫詩集」より、「未刊散文作品」2編とエッセイ9編を読む。
 先行する、「ボートを漕ぐもう一人の婦人の肖像」から、は今月6日の記事にアップした。

 リンクより、旧・感想記事へ遡れる。

 「未刊散文作品」の「花見物語」は、友人と上野で花見をして、自分の得意な「雨に咲く花」を唄うが、歌詞の「ままになるなら」の「まま」を「ママ」と思い込んでいて、「儘」と知らなく皆から大笑いされる話が主なストーリーである。
 「遠ざかる島ふたたび」は、家にいたお手伝いさんの真理子さん(片足がスカートの中までしかないのに、杖なしで歩いたという設定は、不自然である)を主人公にした物語「遠ざかる島」の余談である。2作共に話題がぐねぐね歪んで行く。
 エッセイは、回想談、人情噺が主で、取り上げる事もない。編集者に請われて書いたらしい。「菅間さんに郵便です」は「劇団卍」への、「人事を尽してポエジーを待つ」は写真家・高梨豊への、オマージュである。



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写真ACより、「雨の日」のイラスト1枚。
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 先の6月28日の記事で到着を報せた、結社歌誌「覇王樹」2021年7月号を、ほぼ読み了える。

 リンクには、6月号の感想と、僕の7月号の「葉が見えくれば」6首・他への、リンクが貼ってある。
 また結社のホームページ「短歌の会 覇王樹」も7月号仕様となった。


「覇王樹」7月号
 7月号では、前代表の「佐田毅追悼特集」が組まれる。編集後記の佐田公子・現代表は、100周年の年が明けてから、追悼号を出す予定だったと、明かしている。アルバムとして見開き2ページ11葉、略歴3ページ、社外追悼文1名、社内追悼文4名、当時の紙誌よりの転載5名、歌抄を含めて7ページとなっている。僕の入会時には、佐田毅・代表は病臥中で、巻頭言以外には謦咳に接することはなかった。僕は少ない追悼歌を詠んだのみである。
 これで「覇王樹」代表を継いだ夫人、佐田公子さんも、肩の荷が降りたというか、胸の痞えが降りた心境と察する。「覇王樹」代表・編集発行人の重責を負いつつも。

 「短歌往来」4月号よりY・美加代さんの「過去形ならず」8首、日本歌人クラブ「風」209号よりY・悦子さんの「雪の帽子」5首が転載された。「受贈歌誌抄」3冊(5首ずつ)、「受贈歌集紹介」6冊2ページ、他、内外に手厚い。一般の歌、散文に触れる余力がない。




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 青木祐子「これは経費で落ちません!」8巻を読み了える。
 購入は先の5月25日の記事、「ポイントで3冊を買う」で報せた。

 リンクより、過去巻の感想へ遡れる。


 集英社オレンジ文庫、2021年4月25日・刊。

 4話とエピローグより成る。ただしトナカイ化粧品を吸収合併の際の駆け引きや、細かい経理上の不審案件には、興味が湧かない。
 主人公・森若沙名子と営業部員・太陽の恋話がどうなるか、興味がある。7巻の末で、太陽は大阪営業所に転勤となり、遠距離恋愛となってしまったから、先が心配だった。
 そこは現代、スマホのSkype?かビデオ通話アプリで、互いの顔を見ながら、退社後に話し合っている。
 第3話、過去の決断の正しさを証明します!が、最も盛り上がる。太陽の元カノ、六花と、沙名子が、和食店で対決する。沙名子は心理戦に勝利し、優しさとマウントを込めて、六花(彼氏あり)の愚痴を聞こうとする。
 2社との合併により、天天コーポレーションの規模が大きくなり、経理部1名増員となる。不正を見つける勘の鋭い沙名子だが、恋や交渉は苦手であり、可愛げがある。
 ネット通信の恋とか、マウントとか、現代を作者は取り入れている。
 作者の青木祐子は、1969年・生、ジュナイブル小説・出身である。経理職の経験があるか、どうかは、Wikipediaで分からない。
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写真ACより、「建築」のアイコン1枚。





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 本阿弥書店の総合歌誌「歌壇」2021年6月号を、ほぼ読み了えた。
 到着は、先の5月17日の記事にアップした。

 リンクより、旧号の感想へ遡り得る。

「歌壇」6月号
 2021年6月1日・付け・刊。169ページ。

 巻頭作品20首詠は、穏やかである。吉川宏志「組織図」で、自分の退職を描いている。もっとも何人を馘首して来たか、と思う。
 小島ゆかり「合鍵」では、改憲が消え、ワクチン接種の始まりによるコロナ禍の収束が見えてか、長閑である。次に1首を引く。
夫は長女をわたしは次女をひいきしてあほらし朝の会話も老いぬ
 夫のアメリカでの挑戦と挫折を仄聞した者には、感慨深い。
 特集の「短歌の中の光と闇」は、宗教めくかと読まなかった。編集部が新しく見つけたテーマだろうけれど。

 特別企画「短歌における話し言葉の効果」は、口語・現代文法の短歌を詠む者として、貴重だった。「サラダ記念日」以降、多くのトップ歌人が口語を取り入れ、ニューウェーブも現れ、口語短歌は認められてきた。擬古典短歌を詠んでいる場合ではない。
 連載「平成に逝きし歌びとたち(18)」は、河野裕子を取り上げている。講壇での髪豊かなカラー写真と共に、30首選が、作品集などで知る歌が多く、懐かしかった。版権の問題だろうか、早い全歌集の刊行が待たれる。

 作品7首より1首を引く。T・公作さんの「Bの鉛筆」より。
この辺が引き際だろう丁寧に頭を下げてゆるキャラが去る
 ゆるキャラブームもいつか去って、引き際の潔さを詠んだ。



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 T・篤朗さんが贈ってくださった、同人詩誌「果実」84号を読み了える。
 到着は、今月17日の記事にアップした。


 先行する同・83号の感想は、昨年11月9日の記事にアップした。

 リンクより、旧号の感想へ遡り得る。

「果実」84号
 84号は、60周年記念号である。まずは詩誌の長命を寿ぐ。県内の詩誌として、先日の福井新聞で大きく取り上げられた。同人詩誌「木立ち」の代表だった故・広部英一さんは、同人誌が長く続けば良いものではない、と強く仰っていたけれども。

 「果実」84号には、9名10編の詩と、巻頭言を含め10名12編の記念号の感慨が載る。
 K・不二夫さんの「空虚を抱きしめる」では、「眼光の鋭さが失われ/顔に浮かぶしわが増えている」、また「伴侶が傍らにいないとなると/…」と、妻の居ない生活で、「切に心の底から淋しい」と老境を綴る。
 F・則行さんの「結婚」では結婚の実相の機微を描いて、機知がある。
 O・雅彦さんは、東京在住の詩人だけれども、「ゆき」を「ゆきの時間が/うつくしく/流れている」と、福井県を何度も訪れてのイメージで締めている。
 T・篤朗さんの「竹田の絵が手に入った」は、無名画家の秀作に誰かが竹田の偽名を入れた偽物と知りながら、無名画家の境地を楽しんでいる。
 同・83号の感想が同人のお目に入ったか(T・篤朗さんはこのブログを読んでくださり、声を掛けてくださる)、84号の詩は正当である。
 散文は、「果実の会」内外に向けての寿ぎであり、論ずる事はない。





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