風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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感銘

 軽い本をと思って文庫本棚より取り出し、大崎善生の短編小説集「ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶」を読み了える。新潮文庫、2008年・刊。



 前のブログ「サスケの本棚」によると、2009年1月29日に、彼の短編小説集「孤独か、それに等しいもの」(角川文庫)の感想をアップしている。その前にノンフィクション「聖の青春」、「将棋の子」を読んで、感銘を受けた。

 この本には、「キャトルセプタンブル」、「容認できない海に、やがて君は沈む」、「ドイツイエロー」、「いつか、マヨール広場で」の、4編を収める。
 いずれも娘さんが青年と出逢い、別れる物語である。感情過多で、感銘が薄かった。「聖の青春」、「将棋の子」では、事実が抑えていたけれど、フィクションになると甘いようだ。
 若者向けのファンタジーに思えてくる。


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 本阿弥書店の総合歌誌「歌壇」2020年3月号を、短歌作品中心に読み了える。
 入手は今月16日の記事、入手した3冊を紹介する(7)にアップした。


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 巻頭作品20首では、冒頭の岡野弘彦「聖夜の館」が感銘深かった。90歳代半ばを過ぎて、逝いた妻を偲び、曾孫さんであろうか幼い者を慈しんでいる。「亡き妻が 逢ふ日ひたすらこがれゐし 幼き者と 三日を遊びぬ」。若い頃の歌からは、考えられない心境である。歌の救いだろうか。

 第31回歌壇賞受賞第1作30首、小山美由紀「ながい瞬き」は堅実な連作である。社会は変わった。歌壇は堅実に変われるだろうか。

 歌集・歌書の森、ニュース・クリップの、紹介も有用である。







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 三浦哲郎・短編小説集「愁月記」(7編)より、5番目の「居酒屋にて」を読み了える。
 今月8日の記事、同「夜話」に次ぐ。
概要
 この短編に至って、僕はこの本を以前に読んだ事があると気づいた。前ブログ「サスケの本棚」にも記録がないから、2007年4月以前に読んだのだろう。
 この作品は、ショッキングだったようだ。また再読を、後悔しない。短編集ながら、構成は複雑で、込められた思いを充分には感じ取れていなかったのだろうから。
感想
 若い看護婦(現在は看護士)が夜更けの居酒屋で深酔いしている。おかみとの遣り取りを、作家が耳に入れる設定である。死に際の老男性が乳房に触れようとする事について、「…たったいちどだけって、涙を浮かべて拝んでは手を伸ばしてくるんだから。やりきれないわ」。「拝むと間もなく亡くなるから」。「どうしても厭だとはいえないの、あたし」。
 「わかった。今夜もまた、拝まれてきたんだ」(おかみ)。「そうなの。だんだん手垢にまみれてくるわ」。
 躰が汚れた、結婚を諦めたと、豊満な娘さんがストイックに嘆く。
 老男性の死に際の無念を救ってくれるなら、神仏よりも尊いと、感銘を受ける。
 「夜話」でも挙げた、「神なき信仰」に関わるだろうか。僕は信仰を持たない。信仰なき祈り、はある。
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写真ACより、「キッチングッズ」のイラスト1枚。



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