風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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文春文庫

 椎名誠の小説「黄金時代」を読み了える。
 このブログでは、今月20日日の記事、読み了えた10冊で、「鉄塔のひと その他の短編」を挙げたのみである。

「黄金時代」
 「黄金時代」は、単行本:1998年・文藝春秋・刊。文春文庫:2000年・刊。
 中学3年生から、写真大学生までの「おれ」の自伝的小説である。題名は、あとがきにある通り、逆の連想を以ってつけられた。つまり中高生時代、番長グループと単独で喧嘩対決を繰り返し、家を出て学資稼ぎのアルバイトに至る、闇黒時代である。喧嘩の肉体的衝撃や、心理の描写に迫力がある。
 顔や体に傷を受ける喧嘩は、僕は嫌いである。中学生時代、教師と切手の交換で貰った万年筆を同級生に折られた時も、高校生時代にサッカーでぶつかられて前歯2本を折った時も、茫然とするばかりで、怒りも弁償も湧かなかった。

 あとがきに、本当の「黄金時代」をまだ書けずにいる、とあるが、2002年・刊の「本の雑誌血風録」(既読)がその時代ではないかと、推測する。




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 有明夏夫の小説「俺たちの行進曲」を読み了える
俺たちの行進曲

 有明夏夫(ありあけ・なつお、1936年~2002年)は、1945年に福井県に疎開し、県内の勝山精華高等学校を卒業した。同志社大学工学部を中退し、後に作家となった。
 「俺たちの行進曲」は、文春文庫、1984年2刷。
 僕がなぜ、カバーが破れ、本文ヤケした、マイナーな本を手放さなかったかと言えば、舞台がわが福井県であり、福井方言がふんだんに出て来るからである。
 高校3年生の3人組み音楽部員(父子家庭、母子家庭、孤児院暮らし)が、異性への妄想や小冒険を繰り返し、ユーモラスにシリアスに生き延びてゆく。
 福井方言はディープで、軽く「さっきんてな」(先ほどのような)が出て来る。福井出身者以外に、すべての方言がわかるか、推測できない。

 僕は福井市方言に関心があり、ある詩人の助言を得たりしながら、ほとんど独力でエクセルの方言集を作成し、改訂を重ね、昨年末には550語に至った。
 有明夏夫が多感な時代を福井県で過ごし、福井方言に溢れた1編を残したことに、喝采を送りたい。


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 吉本ばななの短編小説集「デッドエンドの思い出」を読み了える。
 到着は今月20日の記事、届いた2冊を紹介する(18)で報せた。




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 リンクでは、ブログ開始の2016年9月より載っていないと書いたけれども、2007年4月開始の旧ブログ「サスケの本棚」にも載っていないので、13年以上ぶりの吉本ばななの本である。

 「デッドエンドの思い出」は、文春文庫、2007年4刷。「幽霊の家」「『おかあさーん』」「あったかくなんかない」「ともちゃんのしあわせ」「デッドエンドの思い出」、5編を収める。
 娘さんが障害を越えて、恋人と結ばれるストーリーが多い。恋人の8年間のフランス留学、毒物カレー事件、好きな中年男性に恋人がいた、などをクリアして結ばれる。
 「あったかくなんかない」では、幼い仲良しの男児が無理心中に巻き込まれて亡くなるけれども、幸せだった時を回想して結末となる。表題作「デッドエンドの思い出」は失恋物語だけれど、周囲に親切にされて、爽やかな光景で括られている。
 発表後の反響は良く、大きな展開があったと、文庫版あとがきに書かれている。


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 17日の検査入院の1,2日前のばたばたしている時に、総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2020年12月号が届いた。
 同・11月号の感想は、先の10月21日の記事にアップした。



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 12月号の特集では、「2020年のベスト100首―10人10首選」がある。時期的に早く、締め切りはもっと早く、選ぶ歌人もたいへんだったと思う。
 道浦母都子の歌を読むのも楽しみにしている。


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 入院初日の夜に、メルカリを見ていると、吉本ばなな「デッドエンドの思い出」(文春文庫)が最低価格の300円で出ていたので、ポチった。題名に関わらず、バッドエンドの物語でないようだからだ。
 退院した19日の午後に届いた。良質の筈なのに、本文ヤケがあった。
 吉本ばななの小説は、「キッチン」以降、何冊か読んだが、このブログを検索して出てこない。このブログを開始した2016年9月の、以前に読んだのだろう。



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 「開高健 電子全集」特別限定無料版より、エッセイ「私の釣魚大全」の初めを読む。
 同書より、「ベトナム戦記」前半を読む、は今月22日の記事にアップした。





特別限定無料版

 僕は文春文庫の開高健「私の釣魚大全」決定版を持っている。後期を含めて、334ページである。
 ところがこの電子版では、初めの「まずミミズを釣ること」「コイとりまあしゃん、コイをとること」「タナゴはルーペで釣るものであること」「ワカサギ釣りは冬のお花見であること」の4章、79ページまで分しか載っていない。
 釣りは子供の頃、農業用水池で、チャナンピンと呼んでいた小魚を釣った事があるのみである。浮き、糸、錘、針のセットは町内の万屋で買って、竿は篠竹の枝を落としたものだった。餌はご飯粒だった。
 釣りは、好みではないが、耐性がないので面白く読んだ。いずれも凝った蘊蓄話がある。
 僕は文春文庫の「私の釣魚大全」を読むことがあるかも知れない。蔵書は半分に減らして5千冊、と豪語しており、新しい本も入ってくるので、いつ読めるかわからない。

 「開高健 電子全集」限定無料版には他に主に、「夏の闇」が収められているが、これは「開高健 全作品」で読みたい。それで電子全集・限定無料版の読書は、これまでとしたい。


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 文庫本棚より抜き出して、色川武大の連作小説集「怪しい来客簿」を読み了える。
 彼の小説として、2019年9月3日の記事、「あちゃらかぱいッ」以来である。



 色川武大(いろかわ・たけひろ、1929年~1989年)は、プロ賭博師、雑誌編集者を経て、作家となり、阿佐田哲也・名で麻雀小説なども書いた。
 コアなファンがあり、没後、福武書店より、全16巻の全集が刊行された。

怪しい来客簿
  「怪しい来客簿」は、文春文庫、1989年・刊。17編を収める。長く蔵していたので、一茶「七番日記」(上)と同じく、本文ヤケしている。
 戦中から活躍し戦後に没落した知人、芸人、スポーツ選手などを描いている。
 相撲力士の出羽ヶ嶽文治郎、プロ野球の木暮外野手など、幸せと言える晩年を送った人物に救われる。
 多く没落して亡くなり、知人など、亡霊として現れたりする。
 仕舞いの「たすけておくれ」では、自身の胆石手術(こじれて危篤に陥った)をも、戯画化してユーモラスに描く。まるで亡くなった人たちの、仲間のように。


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 三浦哲郎の短編小説集「冬の雁(がん)」を読み了える。
 三浦哲郎の作品では、昨年12月8日の記事にアップした、エッセイ集「おふくろの夜回り」以来である。



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 居間の文庫本棚より、読む本を探しているといると、三浦哲郎の「百日紅の咲かない夏」も目に留まったが、テーマが重く長編小説なので、後の機会に譲った。
 「冬の雁」を見てみると、短編小説集なので読むことにした。全17編。
 文春文庫、1989年1刷。古ぼけて、150円のブックオフの値札が貼ってある。本文までヤケていて、僕が喫煙時代(58歳まで)に買った本だろうか。

 初めの「花いちもんめ」は、養女と父親の、相愛的感情が描かれる。
 出身の青森県の方言が行き交う、逞しく生きる人々の物語がある。
 そして現在の、作家と家族の幸せな家庭も描かれる。
 故郷で、脳血栓で倒れ、病院に寝たきりの母親を、何度も見舞うストーリーもある。母親の死の物語は、どこかで読んだ記憶があるが、長い療養中の話は、この本が初めてではないだろうか。
 1族の暗い宿命のストーリーの1つとして「紺の角帯」は、40余年前、兄が失踪する前、恋人に残した一本の角帯を、その女性から贈られるストーリーである。

 エロス、ユーモア、シリアスと、読者をほろりと楽しませてくれる、名短編ばかりである。





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