風の庫

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映画

 昨日(7月7日)の記事で到着を報せたばかりだが、吉田篤弘の小説「それからはスープのことばかり考えて暮らした」を読み了える。





 中公文庫、2019年5月30日・17刷。著者・吉田篤弘は、クラフト・エヴィング商會の名義での著作・装幀の他、小説を多数発表している。彗星のように現れたクラフト・エヴィング商會は話題になったが、その個人が吉田篤弘と知らず、初めての作家さんである。
 失職中の大里青年(オーリィ)と、サンドイッチ屋「トロワ」の主人・安藤、その息子・律(リツ)、大家の大屋(マダム)、オーリィ青年が憧れる昔の映画の端役・松原あおいの、現在のおばあちゃん、が登場人物である。青年はサンドイッチ屋で働くようになり、スープ役を任せられる。あおいとオーリィが映画館で出会うようになって(あおいも自分の出演映画の上映を追っていた)、知り合い、あおいの絶品のスープの作り方を伝授された所でエンドとなる。娘さんは一人も登場せず、老壮の男女は配偶者を亡くしている。それでも暖かい物語で、ハッピィ・エンドである。
 作者は本作と、「つむじ風食堂の夜」「レインコートを着た犬」を、月舟町三部作と呼んでおり、読みたい気持ちになる。


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写真ACより、「雨の日」のイラスト1枚。


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 思潮社の現代詩文庫181「続続・辻征夫詩集」より、散文作品の「ボートを漕ぐもう一人の婦人の肖像」抄を読み了える。
 先行する「未刊詩篇」は、先の6月26日の記事にアップした。


 この本では、未刊詩篇と散文作品の間に、俳句「貨物船俳句抄」があるが、句集に就いては今年2月23日の記事にアップしたので、ここでは述べない。


 「ボートを漕ぐもう一人の婦人の肖像」から、はエッセイの「バートルビ」、エッセイ風の小説「自転車」、ホラー風の小説「砂場」、エッセイの「マフラー」、「坂道の男」5編を収める。
 「バートルビ」は、映画のシナリオの執筆を誘われた所から始まる。作者の切ない失恋を、映画「バートルビ」に絡めて描く。メルヴィルの「書記バートルビ」を原作とするが、僕は代表作「白鯨」を途中放棄したので、メルヴィルは嫌いである。「坂道」は、坂道を目を瞑って自転車で降りる秒数を、毎日伸ばす(先は国道と交差する)、ホラーめいたストーリーである。
 「砂場」は、後方でホラーとなる。小説を試みた詩人の、琢磨がわかる。「マフラー」は、「詩が元々下手だったのに、改めて下手になったと実感する。もっと下手になろうと思ったりする」という詩論を交えた、1編である。「坂道の男」は、泥酔して記憶にない事を女将に言われ、知人の直子さんから、覚えのない女優との道中を見たと言われ、父からは新聞の美談の写真の男と間違われ、自分にそっくりの男がいる、あるいは「分身」のいるような、思いにさせられる。僕がエッセイとした散文にも、フィクションの入っている可能性は大である。

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写真ACより、「雨の日」のイラスト1枚。



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