思潮社「関根弘詩集」(1968年・刊)より詩集「絵の宿題」より、「絵の宿題」の章を読み了える。
今月4日の記事、同・詩集より「実験」の章に次ぐ。
概要
原著は、1953年、建民社・刊。
1920年生まれながら、戦時中、「軍事工業新聞社」に勤めていたせいか、従軍を免れた。
戦後、「全国工業新聞社」に勤め、組合運動に携わり日本共産党に入党(後に脱党)するがレッドパージで離職。後は文化活動に従事したようだ。
感想
「絵の宿題」の章は、表題の章ながら、5編を収めるのみである。
「背中の目」は、戦後再建の時代の、新聞報道や緑の羽根の欺瞞、野球放送・観戦、競輪等の賭博、等の娯楽に由って、生活と向き合う心を逸らさせる、風潮を描いた。
詩集の表題作でもある「絵の宿題」は、語り風な文体と4行/2行の繰り返しに由って、絵本風な作風を取り入れている。末尾近く「ところが/ゼイキンはボク達が払っていた。//ここに描いてください。ゼイキンを払っているボク達を。…世界(ニホン)は僕たちのもの。/ボク達がボク達のものになるとき」は、納税者の誤りと、スローガン的な面がある。
「燃えている家」は、「燃えている家」を初めに置いた3行を繰り返すレトリックはありながら、ドグマ的である。
「靴の歌」では、電車、汽車、自動車、飛行機に反し、靴を賛美している。今から見ると、アナクロニスティックでもある。
リアリズムとアヴァンギャルドの統一という目標は、達成されていない。
彼はサークル詩運動を唱導したが、戦後庶民が感情表白の場を得た喜びが想像される。
写真ACより、「乗り物」のイラスト1枚。
欺瞞
歌誌「歌壇」8月号を読む

綜合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2018年8月号を、短歌作品中心に読み了える。
到着は今月15日の記事、同・8月号が届くにアップした。
概要
2018年8月1日付け・刊。169ページ。800円(税込み)。毎月・発行。
定価を据え置いているので、消費税率アップの度に苦労したと察する。
感想
特集「回想の夏――思い出をどう詠むか」は、期待した程でなかった。総論は例歌が古く、僕は「故郷」に住んでおり、戦争体験はない。
噴火、地震、水害には遭った事がない。県には戦後、大地震があり、原発銀座と呼ばれる程に原発が集中しており、最近の異常気象もあって、いつ災害に遭うか判らないけれども。
妻は生きており、子夫婦は遠く住む。回想詠という程のことはない。僕は現在の、トリヴィアルを多く詠んでいるようだ。学生時代とそれ以後(短歌に出会うまで)は、今は詠めない。
佐佐木幸綱「ザ・巨匠の添削 佐佐木信綱」でも、大きな添削はしていなく、ホッとする。
「第十五回筑紫歌壇賞」の野上卓「レプリカの鯨」はおめでたい。しかし投稿歌より採られた作がほとんどで、結社誌の作は含まないという。僕は投稿歌の経験がない。投稿歌にはレトリックや、プライベートの切り売りなど、負荷が大きいように思う。
引用
1首のみ引用する。桜井京子「砂糖のための七首」より。
テーブルに砂糖が散らばり国会は欺瞞まみれの男を映す
「欺瞞まみれ」と言いきって小気味よい。砂糖に集まる蟻を連想する。

