風の庫

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永田書房

 角川書店「増補 現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、18番め、最後の句集、斎藤玄「雁道」を読み了える。
 先行する北野民雄・句集「私歴」は、今月16日の記事にアップした。




 原著「雁道(かりみち)」は、1979年、永田書房・刊。1975年~1978年の4年の382句を、年毎に4章にまとめて収め、著者・後書を付す。
 1980年4月8日、蛇笏賞に決まり、1か月後の5月8日に癌で逝いた。

 斎藤玄(さいとう・げん、1918年~1980年)は、戦前に西東三鬼に師事、「京大俳句」に拠った。戦後、俳誌、個人誌を創刊しながら、石田波郷「鶴」に1時参加した。
 「雁道」は第5句集であり、1983年「無畔」、1986年「斎藤玄全句集」(永田書房・刊)がある。
 句割れ、句跨りなどありながら、定型を守っている。4度の開腹手術を受け、死を覚悟したようだが、悟ったような澄んだ句より、死の怖れを表したような句に好感を持つ。


 以下に5句を引く。
なにげなき餅草摘の身拵
はるけきを待つ邯鄲の鳴くを待つ
花山椒みな吹かれみなかたちあり
心痩せては花桐の吹溜
山をもて目を遮りぬ秋の暮
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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。




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 角川書店「増補 現代俳句系」第15巻(1981年・刊)より、16番めの句集、森澄雄「鯉素」を詠み了える。
 先行する阿部みどり女・句集「月下美人」は、今月3日の記事にアップした。



 原著は、1976年、永田書房・刊。381句、著者・あとがきを収める。
 森澄雄(もり・すみお、1919年~2010年)は、1940年の加藤楸邨「寒雷」創刊に参加、1970年に「杉」を創刊。飯田龍太と共に、伝統俳句の代表作家と呼ばれた。
 その後も句集を刊行し、1997年に恩賜賞・日本芸術院賞を受け、芸術院会員となる。

 「鯉素」は、漢詩に依り、「手紙」の意である。4年間の句は、旅に得た作品が多い。旦那俳人が、地方の旦那衆俳人を巡って指導するようで、嫌味である。地元で吟じられた句は、嬉しいようにも思うけれども。社会性俳句、前衛俳句に、背を向けた果てだろう。


 以下に5句を引く。
をさなくてめをとはよけれ二つ雛
青涼の葦と暮らして葦長者
甘橿の国見に雲雀羽ふるふ
吾亦紅すこしいこへば空の冷
青紫蘇を嗅いで力に峠越

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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。


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 角川書店「増補 現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、4番目の句集・松村蒼石「雁」を読み了える。
 今月5日の記事、角川源義・句集「西行の日」に次ぐ。
概要
 原著は、1975年、永田書房・刊。1971年~1975年の331句を、年別に、章題を付して収める。著者・あとがきを付す。第5句集。
 松村蒼石(まつむら・そうせき、1887年~1982年)は、幼くして丁稚奉公に出、飯田蛇笏「雲母」に入って活躍した。
 戦前に家族の死に次々と遭いながら、不幸に負けない精神を持ったとされる。
 1970年代初めの社会状況には、ほとんど影響されていない。中島みゆきの「時代」の歌さえ、僕は「早くも再起してしてしまうんだ」と、遠く聞いていたものだが。
引用

 4句を引き、寸感を付す。
童が目守る大き頭りの寝釈迦さま
 上句の「こがまもる」は読めたけれども、「つむり」に気づくには時間が掛かった。
白鳥引き朝あけの湖疲れけり
 比喩の句である。擬人法とは言えないだろう。
寒や白けて雨忘じゐる野川
 句跨りが2つある。ここに違和感を表わす他になかったのだろう。
もう鳴かぬ虫白壁は日を溜めて
 中句に句割れがある。こういった所にしか、良心を表わせなかった苦衷を偲ぶ。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。



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 角川書店「増補 現代俳句大系」第14巻(1981年・刊)より、最終22番めの句集、宇佐美魚目「秋収冬蔵」を読み了える。
 今月1日の記事で、福井県俳句作家協会「年刊句集 福井県 第57集」を読み了えたからである。
 同・第14巻からでは、4月4日の記事、赤尾兜子「歳華集」以来である。
 同・第14巻には、「歳華集」と「秋収冬蔵」の間に、伊丹三樹彦・句集「仏恋(ほとけごい)」(1975年・刊)があるが、戦時下の句であり、宗教に傾き過ぎているので、今は飛ばした。
 次は「増補 現代俳句大系」の最終、第15巻に入る。
概要
 「秋集冬蔵」の原著は、1975年、永田書房・刊。1960年~1974年の360句、著者・あとがきを収める。「崖」(1959年、近藤書店・刊)に次ぐ、第2句集である。
 宇佐美魚目(うさみ・ぎょもく、1926年~2018年)は、「ホトトギス」より出発し、現代俳句とも関わりを持ったようである。
感想

 なぜ16年も間をおいて、第2句集を出版したのだろう。60年安保以降の世の風潮が合わず、再び保守化した1975年となって、出版したのか。
 あるいは伝統派と現代派の間で、作句が揺れたのか。
 松尾芭蕉や高浜虚子を吟じた句は、黄門様の印籠みたいなもので、反発の仕様もない。
引用
 以下に5句を引く。
籾殻を根雪に三戸馬を飼ふ
睡後の目あかし雪ふる柿の中
ひるの灯に読みさしの書や括り菊
箱橇の曲つて消えし一位籬(木曾)
春暖の赤子のこぶし雨意の松
0-45
写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。





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