風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

渋い

 総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2020年4月号を、作品中心に読み了える。
 入手は今月19日の記事、届いた3冊を紹介する(8)にアップした。リンクより、3月号の感想へ遡れる。



IMG_20200318_0003
 巻頭作品20首では、外塚喬「絵地図をひらく」が老いの心境を展いて渋い。吉川宏志「うしろむく人」の掉尾「道すべて封鎖されたる武漢にも梅咲きをらむ映されざりき」が、新型コロナウイルスを描いて新しいが、梅の花にずれて行かない方が良いと思う。
 「平成に逝きし歌びとたち(4)大西民子」は、大写しの写真1枚と、沢口芙美の6ページに渉る紹介、30首選を挙げ、感銘深かった。僕は生前版の全歌集を読み、そのあとの2、3冊の歌集も読んだ。僕の短歌の詠み初めの頃のことである。没後の新しい全歌集を読む気はない。
 特集「どうする?歌の表記」では、僕は新かな、口語の歌に進んでおり、ひらがな表記、特殊なルビへの関心も薄い。
 篠弘の評論「戦争と歌人たち」も70回で最終回を迎えた。労作である。将来へ向けた反戦論が必要だろう。
 特別作品30首の島崎榮一「秩父困民党」は今更のテーマと思う。僕が待っているのは、このような主題ではない。
 作品7首に、竹村公作「イスカンダルへ」など、秀作がある。



このエントリーをはてなブックマークに追加

IMG_20190126_0002
 三浦哲郎・短編小説集「愁月記」より、冒頭の表題作「愁月記」を読み了える。
 新潮文庫、1993年・刊。7編の短編小説を収める。帯が破れかけているが、残している。
 故郷に長病む母の最期を看取りに、故郷へむかう列車で、以前によく上京していた母の、食事時に急に泣き出したり、作家の仕事部屋を眺めまわして満足していた時を、回想する。不遇な宿命を背負った子供たちのうち、末弟の作家が成功して穏やかに過ごしている事に満足だったのだろうと、文中にはないが察せられる。
 目が弱くて琴の師匠をしている姉、母を長く世話している世話上手の付添婦さんなど、他の小説にも現われる人物が、心優しい。親しんでくれた若い看護婦の話もある。
 作家がいったん実家に戻って休んでいる間に、母の容体が急変し亡くなる。死に目には会えなかったが、作家は喪主としてあれこれ手配し、斎場から骨壺を抱いて車で戻る所で終わる。
 好い日和に亡くなり、数日間好天だった事も、故人の徳として語られる。
 現代風のチャキチャキした文体でなく、渋い文体で淡々と語られ、優れた母への挽歌である。


このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ