風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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読書会

 4月13日(第2火曜日)の午前10時より、和田公民館にて、和田たんぽぽ読書会の4月例会が持たれた。新年度より会長のAKさんより、挨拶と連絡があった。
 課題図書は、村山由佳の「星々の舟」だった。

星々の舟 Voyage Through Stars
村山 由佳
文藝春秋
2003-03-30


 この本を、県立図書館の語らい文庫(読書会向けへ同1の本を、多数貸し出す)から選んだのは僕だが、内容を読み始めて選択ミスだと思った。レイプ等の性的虐待、近親相姦、不倫、倦怠期夫婦など、センセーショナルな話題ばかりで成っているからだ。
 司会の僕が、上記の事を詫びると、会員(8名のうち6名出席)からは、いやそうではない、という声が上がった。
 AKさんより、左回りに感想を述べてゆく事になった。一家の長の重之と従軍慰安婦のエピソードがショッキングだった。性的な事ばかりが出て来て、心苦しかった、と述べた。
 TRさんは、韓国からの従軍慰安婦、強制労働などの告発を、本当だったんだろうな、と受け取った。人間の厭らしさを赤裸々に描き、読むにつらいものがあったと語った。
 ATさんは、兄妹相姦だった兄・暁は結婚、離婚し、妹の沙恵は独身を通す。最後の墓前での、重之、暁、沙恵の再会があるが、このまま和解して良いのだろうかと、疑問を立てた。
 IMさんは、ストーリーに不自然な所がある。作者は永遠の愛を書いて見たかったのか、と述べた。
 MMさんは、重之の従軍に絡めて、自分の学徒動員、守ってくれた朝鮮人の先輩、などを語った。村山由佳が福井新聞に連載小説「星屑」を挙げている事を教えた。
 僕は、従軍した兵士にも、宮柊二(結社歌誌「コスモス」の創刊者)のように、1度も慰安所へ行かなかった者がいる。重之の子・孫のうち最も安定した生活を送るように見える、長男・貢が学生運動から抜けて、就職・結婚し子を成しながら、休日農園にのめり込んでゆくコースに、共感すると述べた。
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写真ACより、「ガーデニング」のイラスト1枚。



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 和田たんぽぽ読書会の3月読書会の課題図書、佐藤愛子のエッセイ集「九十歳。 何がめでたい」を読み了える。

九十歳。何がめでたい
佐藤愛子
小学館
2016-08-01

 小学館・刊、2017年・24刷、222ページ。
 佐藤愛子(さとう・あいこ)は1923年・生まれ、父は作家の佐藤紅緑、詩人のサトウ・ハチローは兄である。
 僕は残念ながら、佐藤愛子の本を読むのは初めてである。頑張り屋の豪快な女性と、噂は聞いていた。
 あとがきに当たる「おしまいの言葉」を読むと、老人性うつ病を自覚したころ、「女性セブン」の編集者がエッセイ連載の依頼に来て、隔週連載で引き受けたとの事である。連載のおかげで、脳細胞の錆びはいくらか削れてなくなりかけていた力が戻って来たと思うと書く。怒りの種が尽きたのか、闘うべき矢玉が盡きたと休載した。
 自転車がスーと横に現れる危険を若い人に愚痴ると反発される。そこで、ナニが進歩だ、ナニが感動的だ!と怒る。
 次の「来るか?日本人総アホ時代」では、スマホの普及と、馴染めない老人の嘆きを訴える。水道(と洗濯機)の普及はともかく、僕もITの進化はこれくらいで良いと思う。CIlubhouseやTikTokは要らない、IoTに向かってほしい。
 金銭づくの処理、ゆとりのなさを嘆く。「闘争心が人一倍強い」と自覚する作家の、時代に付いていけない事が多い、怒りの言葉である。僕は同意する点と、できない点がある。
ヒヤシンス (2)
写真ACより、「ヒヤシンス」のイラスト1枚。



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 和田たんぽぽ読書会の2月読書会の課題図書、中島京子「夢見る帝国図書館」を読み了える。
 僕は読書会を10月、11月と休み、1月例会も退院1週間の診察があり、参加できなかった。ブログには、昨年12月例会の記事が残っている。


夢見る帝国図書館
 2月課題図書は、中島京子の長編小説「夢見る帝国図書館」である。
 文藝春秋・刊、2019年7刷。404ページ。
 駆け出しの作家の「わたし」が喜和子さんと交流する話に、帝国図書館の歴史が挟まるのだが、同時代のパラレルワールドではなく、戦後焼け跡からの喜和子さんの物語が会話の多い文章体で、明治からの帝国図書館の物語がやや講談調で語られ、すっきりなじまない。末尾で、帝国図書館と喜和子さんの物語は結び付き、見事ではある。



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 和田たんぽぽ読書会の11月例会の課題図書、ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」を読み了える。
ぼくはイエローで…
 新潮社、2019年11月25日・13刷。253ページ。
 読み了えて、ジャンルは何だろうと考える。ジャンル分けより、中身が大切なことは分かっているが。
 小説でなく、エッセイでなく、いわゆるノンフィクションでもない。ノンフィクションの1分野、ルポルタージュだろうか。開高健のルポルタージュ「ベトナム戦記」にも、似た切迫感があった。
 アイルランド人と結婚した日本人女性の、一人息子がエリート系のカソリック系中学校ではなく、白人労働者の子供たちが通う、元底辺校に自ら通うようになった生活を描いている。
 人種差別、LGBT、貧富の差、など(家庭内を含め)、トラブルの渦中の中学生たちである。
 上記の事柄に関心のある方は、読むと良いだろう。
 著者がブレないのは、夫と共に、カソリック信徒であるせいもあるだろう。



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 7月14日(第2火曜日)の午前10時より、公民館の1室で、和田たんぽぽ読書会の7月例会が持たれた。
 6月例会は、先の6月17日の記事にアップした。



島本理生 ファーストラブ
 7月読書会の課題本は、島本理生の長編小説「ファーストラヴ」だった。なおこの作品は、第159回直木賞を受賞している。自傷のため買った包丁が、誤まって父に刺さったが、女子大生はその場を放棄してしまう事件を扱う。
 連絡先と体温が37・5度以下である事の記入、全員マスク、窓を開け放ち、互いに距離を置いての読書会だった。
 島本理生の生活、被批評、などを図書で調べた人、飛ばし読みしたけれど内容が重くて深いと述べる人がいた。ある人は、主人公の母親が考えられない、言いたいことはわかるけれども、と語った。
 僕は摘まみ読みで通読しなかった。ストーリーが読めてしまうこと、裁判での量刑が不自然なこと(過失致死と保護者遺棄(?)で懲役8年は重いと思われた)、裁判後には真実の追及に関わった人々が幸せになってしまうことなどに、違和感を感じた。
 ストーリーに自分の幼年時代を重ねて感情移入する人、男性二人に仏教から来た名を付けていることに作者の思いを推測する人もいた。
 作品は、若者から先輩へのプレゼントだ、との発言がまとめになった。
 コロナ禍のため部屋の使用が1時間に制限されていた。ぼくが先日、県立図書館のかたらい文庫で借りた、三浦しをん「愛なき世界」を7人全員に配って、11時過ぎに散会した。



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 三浦しをんの小説「ののはな通信」を読み了える。
 先の3月26日の記事、和田たんぽぽ読書会(5)で、4月例会の課題図書として手渡された本である。4月14日に予定されていた例会は、コロナ禍により中止となり、読書会の再開の目途も立たない。

 

 三浦しをんの小説は今年1月20日の記事に、新潮文庫「風が強く吹いている」を、批判的に取り上げた。またKindle本・短編「天上の飲み物」を読んだ。
 


「ののはな通信」 (2)
 「ののはな通信」は、2018年5月、新潮社・刊、448ページ。
 「のの」こと野々原茜と、「はな」こと牧田はなが、女子高校の生徒だった時に出会って、S関係に入り沢山の手紙を交すが別れて、お互い大学に入り文通、訪問の再開、大人になってメールを重ねる、書簡体小説である。
 「のの」は東大文学部を卒業するけれども(年上の「悦子さん」と同棲し、見送って)、学究を諦め、フリーライターとなる。「はな」は外交官夫人となり、国々を回る。「はな」はゾンダ(架空の国)の大使夫人の時、ゾンダに内戦が再発し、隣国の難民キャンプで活動する、と言い残して行方不明になる。
 高校生時代のS関係が、次第に美化され、唯一の純粋な愛として残る様を描いている。読者の評価は、異なってくるだろう。


 
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 3月25日(第4水曜日)午前10時より、某会館にて、和田たんぽぽ読書会3月例会が持たれた。
 2月例会は、先の2月15日の記事にアップした。



 3月例会の課題図書は、藤田宜永の小説「愛の領分」である。僕の感想は前以って、今月3日のブログ記事にアップした。



愛の領分
 新型コロナウイルスの感染を防ぐため、全員マスク着用、戸を開け放っての読書会だった。メンバー7人が揃った。

 A・Tさんの司会で、僕からの発言となった。僕はブログ記事通り、主人公・淳蔵に批判的に述べた。A・Kさんは、大人の恋愛小説として、高評価した。お酒の場面が似合い、楽しく読んだと。
 T・Rさんは、描写がいやらしくなく、きれいだと述べた。あとがきの「静思果敢」の語を面白いと。
 O・Tさんは、刺激が強く、ハッピイエンドでなく、苦手である、きれいな恋愛ものが好き、と戦後生まれらしかった。M・Mさん(会の創始者)は、この小説が2度めだと指摘した。I・Yさんは、複雑な経路を、洞察しながら描く、と述べた。
 A・Tさんは、複雑な関係を読んで、母親として子育てを反省していた。司会として「皆さん(高齢なので)、小説の中で恋愛をしましょうね」と、きれいにまとめようとした。


 新型コロナウイルス、森友事件の告発のことなど話し合って、4月の課題図書、三浦しをん「ののはな通信」を各自受け取り、11時40分頃に散会した。




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