風の庫

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農民

 土曜美術社出版販売の新・日本現代詩文庫150「山田清吉詩集」より、5番めの「だんだんたんぼ」(抄)を読み了える。
 先行する同「田んぼ」全篇は、今月3日の記事にアップした。



 「だんだんたんぼ」は、2004年、紫陽社・刊。27編を抄出する。
 「あのとき」は、軍靴に踏みにじられた女性、戦後パンパンとなった女性を、半世紀を過ぎながら、詩に化することによって、幻想的に昇華することで魂鎮めしている。
 「ちょっとまて」は、父親を亡くした孫たちに、米を運ぼうとして、警察に捕まる媼を描く。「でものう 天子様にあげた命二ツ/息子二人をここに連れて来てくださらんか/そうすれぁこの米でも/己
(うら)の命でも置いていきますげの」と、媼に成り代わって方言で歌うことで、戦争の悲惨と、戦後も相変わらずの官憲の愚をあばいて、絶唱である。
 「人間であることが嫌になる今日此の頃」では、自衛隊によって憲法第九条を空文化し、海外派遣に至る頃を描いて、スローガン的ながら痛烈である。
 自分の葬儀を想定した作品は、これまでの詩集と同じく混ざっている。
 「雨の中の稲刈り」「足踏み脱穀機」「百姓の手」が、農民の苦しみを訥々と作品化した。

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写真ACより、「カーメンテナンス」のイラスト1枚。


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 土曜美術社出版販売の新・日本現代詩文庫150「山田清吉詩集」より、「べと」全篇を読み了える。
 新・日本現代詩文庫の受贈は、先の6月23日の記事、入手した5冊を紹介する(5)にアップした。



山田清吉詩集
 アンソロジー詩集の、表紙写真を再掲する。ビニールカバー付き。

 第1詩集「べと」は、1976年、木立ちの会・刊。16編を収める。
 なお「べと」は、「泥」「土」「粘土」の意味の方言である。今ネット検索すると、新潟県、富山県、石川県、福井県、長野県、静岡県、岐阜県、愛知県、奈良県、鳥取県、愛媛県の、それぞれ1部地域で使われるとある。
 「べとなぶり」の語もあり、「土いぢり」の意味で、「園芸」「陶芸」を指し、謙譲語めく。

 詩集「べと」には、働き詰めで田で倒れた父など、農民の苦しみと共に、「列島改造論」による農地転用によって、田畑が高額で売れて戸惑う姿も描かれる。
 また戦時下空襲後の様を描いて、後に明らかになる反戦のテーマが始まる。
 今、卒寿を越えられた山田清吉の、長い労働と思索・詩作の始まりである。


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