風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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辻征夫

 思潮社の現代詩文庫155「続・辻征夫詩集」より、「ボートを漕ぐおばさんの肖像」から、を読み了える。この文庫には、同・詩集より、9編を抄出している。
 先行する「ヴェルレーヌの余白に」は、今月25日の記事にアップした。


 「ボートを漕ぐおばさんの肖像」から、には詩集「かぜのひきかた」から、に出て来る、詩人の胸に住み着くヘレンおばさんの変形が幾つも出て来る。


 「ボーとを漕ぐ不思議なおばさん」では、「ぼくのおばさんはまだ/遠くにいて/いっしょうけんめいボートを漕いでいる」と詩人に好意的なおばさんが現れる。
 「浜木綿のかげに運動靴を置いて」では、「夏のあいだ/海には不思議なおばさんがいて/ぼくを見ていてくれたので」と、「ぼく」もおばさんに感謝の念を抱く。
 以下、不思議なおばさんは、「冬は風と夢の季節で」、「雲」、「ぼくの物語が書いてある本の」、「降りしきる雪の中で」、「おじさんがいっぱい」、「遠い花火」の各編に現れて、詩人を慰め諭してくれる。
 辻征夫の詩には、詩集を違えて、同じ人物や、テーマの解説が表され、詩想の深まりを感じさせる場合がある。
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写真ACより、「ビジネス」のイラスト1枚。




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 思潮社の現代詩文庫155「続・辻征夫詩集」より、詩集「ヴェルレーヌの余白に」全編を読み了える。
 先行する「鶯」から、は今月20日の記事にアップした。


 「ヴェルレーヌの余白に」(1990年、思潮社・刊)は、16編の詩を収める。
 「これはいにしえの嘘のものがたりの」は、同級生だった女の子が芸妓になり、水揚げの日、悪友4人が集まって初めて大酒を飲み、げろを吐いたと言う、同級生の友情の物語である。もちろんフィクションの可能性が高い。
 「蛇いちご」は性の和合、「六番の御掟について」は性の不和の、象徴のように読める。
 表題作の「ヴェルレーヌの余白に」は、題名の優雅さに似つかない結末となる。「をぐらき庭のかたすみに/襤褸のごとく/われは吐瀉物にまみれて凍へてをりぬ。……」。次ぐ「レイモンド・カーヴァーを読みながら」も、酔いの失態を思い出している作品である。
 「春の海」は、「春の海ひねもすのたりのたり哉」から海獣「ヒネモス」を、カラスの古巣の歌詞から「フールス」をひねり出したりしながら、苦しい失恋を描いている。これは後の作品によると、リアルな経験だったらしい。
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写真ACより、「ビジネス」のイラスト1枚。



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 辻征夫の句集「貨物船句集」を読み了える。貨物船は俳号である。
 メルカリでの購入は、今月17日の記事にアップした。


貨物船句集
 現物のスキャン画像の方が、Amazon画像より、帯がある分だけマシである。

 詩業については、思潮社の現代詩文庫より、未刊詩篇と短編1篇を読んだ所である。


 句集「貨物船句集」は、没後の2001年1月、書肆山田・刊。1ページ4句組み、91ページ。
 1985年、詩誌「詩学」の投稿欄選者として、小説・俳句・他を書いていた小沢信男と出会い、俳句会「余白句会」を結成した。連衆はおもに、辻征夫の知り合いの詩人である。
 句風は、時に字余りを交えて、詩人らしい新鮮さがある。先行句にリスペクトした句もあるが、新しさを加えている。
 61歳、句会への最後の出席は、奥さんに支えられてで、「満月や大人になってもついてくる」の句で、最高点となった。(小沢信男のあとがきより)。

 以下に5句を引く。
おみな往ぬ蟋蟀がいる台所
むすめながら乱れて泳ぐ緋鯉かな
断崖やもう秋風のたちつてと
雛祭り娘はどこの街どこの路地
稲妻やあひたかつたとみんないふ



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